カルロス・マヌエルの衝撃的ファースト・アルバム。
キューバの音楽界はコマーシャリズムがなく完全な実力主義なので、名門オルケスタで修行するか、楽曲を提供してキャリアを積むかしないと自分のオルケスタを持つまでには至りません。 さらに、CDをすぐにリリースするのは難しく、 よほどライブで人気を獲得しなければ実現不可能といえます。
そんな中 まさに彗星のごとく登場し、一気に人気トップの座を つかんでしまったのがカルロス・マヌエル。 2000年を迎えてすぐ、キューバ旅行帰りの友人から、 ハバナで大人気になっているという話を聞いて手に入れたのが この作品ですが、なんと、とんでもない傑作でした。
作曲、アレンジはほとんどカルロス・マヌエル自身が担当。 演奏のテクニックを見せつけるというよりは キャッチーでポップな曲調はダンスに最適です。 ソンやジャズから出発したティンバが多い中、この作品は明らかに サルサ・ロマンティカのティンバ版にあたる成功例でしょう。
また、彼ほど白人色の強いルックスとサウンドがキューバで うけたのも珍しく、国外のトラディショナルなキューバ音楽の ファンからは本当にキューバ人なのかと思われたりもしていました。
聴き所は、2.Prometisteと9.Pá la Lunaあたりですが、 他の楽曲も思わず一緒に口ずさみたくなる、 印象深いメロディが多く、充実しています。
次作の2001年発表「Malo Cantidad」(PALMCD 2064-2)の タイトル・ソングはキューバ国内で空前の大ヒット。 その後3作目(発表して直後に、彼は単身でマイアミに亡命)は、 POP路線を推し進めた内容となりましたが、 このデビュー作は、1999年ティンバ全盛期の勢いが感じられる という意味でもイチオシです。
(福田 カズノブ ★ 2004/12/27)
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