ロス・バン・バンの1999年以来5年ぶりとなるスタジオ録音新作です。
解説によると、タイトル「Chapeando」はサトウキビを切り倒すことを意味するサンテリアの言葉でバン・バンは新しい道を切り開いて海を越えなければいけないと歌っています。 これは、バン・バンのバンド内の状況であり、海外進出の狙いでもあり、キューバ国民に対する激励やメッセージにも受け取れます。
結成以来35年間ほぼトップを維持して、現在も名実共に絶大な人気を誇る唯一のバンドとして、キューバ人にとってバン・バンはなくてはならない存在なのでしょう。
前作「Llego Van Van」(Atlantic83227-2)が傑作だったこともあって新作への期待が膨らむ中、バンド内は、主要メンバーであるプピ・ペドロソ(ピアノ、作曲、アレンジ)と看板ソネーロのペドロ・カルボの相次ぐ脱退、初の女性シンガーであるジェニー・バルデス(元エネヘ・ラ・バンダ)の加入と大きな動きがありました。 リーダーのファン・フォルメルは年齢もあってライブは若手にまかせている様子。 そんな状況の中で6ヶ月の期間をかけての録音。バン・バンの力の入れようは相当のものがあります。
オープニングは長めのピアノ・ソロから入り、そして往年のバン・バン・メロディでスタート。タイトル曲は派手ではありませんが傑作といえるでしょう。 全体的にキューバ独特の味わいのあるナンバーが多く、じっくり聞き込むと良さがにじみ出てきます。ボーカル陣では、ロベルトンがマジートに比べ良い曲を歌っていて、ロベルトン色が強く出ています。それぞれソロ作の話もあるようなので、このあたりも今後気になる所です。 また、作曲陣にはピアノのロベルト・カルロス・ロドリゲスが加わり、キャッチーなヒット曲11. Ven,ven,venを書いていて、今後の期待が膨らみます。
ポップ路線がトレンドになっているキューバ音楽界で重厚な音で勝負に出たバン・バン、ファン・フォルメルはやはり健在で、キューバ音楽の王者の風格があります。
この作品はバン・バン・ファンのみならず、キューバ音楽ファン必聴ですが、作品の勢いや派手さとしては前作「Llego Van Van」と前々作「Te Pone la Cabeza Mala」(Caribe Productions9506)に軍配が上がりますので、聴いていない方はそちらもお勧めします。
(福田 カズノブ ★ 2005/01/10)
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