デビュー作に当たる「Una Aventura Loca」(1994) 「ラ・ボラ」が大ヒットした「Para Mi Gente」(1995) 名作といわれる「De Buena Fue」(1997)。 マノリンのファンのみならず キューバ音楽ファンならばどれも外せない、ということになるのでしょうが 私にとっては、キューバで一時代をなした彼が、マイアミに移る直前に 置き土産のように残した作品「ハケ・マテ」が最高の作品です。
マノリンのカリスマ的音楽性に はっとするようなアレンジを生み出すことが出来る Luis Bu Pascual の 才能が惜しみなく捧げられ、さらにレベルの高いミュージシャンが 集ったということで、このアルバムは奇跡的に濃い内容になったと感じます。
それまでは、マノリンも、いわゆる「キューバン・サルサ」の枠で音楽を創作していたわけですが このアルバムを機にFUNK、R&Bの色を濃くさせました(なぜか歌唱も私好みのアクのあるスタイルに)。 何という嬉しい裏切り。 単純に米国的な音楽に移行したということではなく そういったものと結びつけたことで、キューバ音楽の奥深さ、力強さが押し出され、 マノリンの、けして小さくまとまることのない才能を見せ付けられた思いです。
基本的にファンキーな骨太のビートを用いた楽曲が目立ち 硬質な音作りが印象に残るのですが、 聴き所はそういった部分だけに収まりません。 例えば 6.。この泣き出しそうになるほどの切なさといったら、どうでしょう。 後半、ブラスがコロと共に奏でる部分は、何度耳にしても胸を締め付けられます。
マノリンは、医師としての経験があるために「メディコ」の 名で親しまれているわけですが、ソロ・デビュー作品を発表するまでに すでに、作曲家としての才能は発揮していたようで、 すでに人気オルケスタとして若い世代中心に 人気を誇っていたチャランガ・アバネーラの作品にクレジットされている Manolo Ginzález こそがマノリンその人だそうです。
2003年には、ポップス・アルバムを発表したりと、 ティンバ愛好家にとっては肩すかしな活動もみせたマノリンですが、 彼の根底にあるキューバ音楽へのアイディアはこれで収まるようなものではない。 そう想像させるほど、「Jaque Mate」は聴き応えのある作品になっています。
(DJ KAZURU ★ 2005/01/17)
|