キューバのポピュラー音楽に興味のある人ならば、誰もが一度はチャランガ・アバネーラの曲を聴いたことがあるでしょう。
圧倒的な人気を国内外に誇っているチャランガ・アバネーラにはそれぞれの時期で名作が多いのですが、中でも前作に比して、ぐっとソウルフルに成長したこの4作目は聴きどころが多いと思います。本作以降、またテイストを変えていったことも考えれば貴重な1枚ということになるでしょう。 発売当初、この作品を聴いた時は驚きと興奮で頭がくらくらきたことを覚えています。まさにチャランガ・ファンはもちろん、全キューバ音楽ファン必聴のマスト・アイテム。
さて、内容ですが、当時からカリスマ的存在だったミッチェル・マサのソウルフルなボーカルの魅力が全開しています。モンスター・ヒットとなったリーダー、ダビ・カルザード作の5.Lola,Lola」はキューバのみならず、カリブや中米でもヒットし、現在のコンサートでもこの曲のリクエストの声が上がる程、チャランガの代表曲として広く愛されているのです。 ライター兼ボーカルには、隠れた名オルケスタとして名高い「コネクシオン・サルセーラ」に楽曲を多数提供した実績のあるダニー・ロサーダが加入し素晴らしい仕事をしています。2.と6.は、ダニー・ロサーダ作、ミチェル・マサ歌ですが、メロディ、歌、グルーヴどれをとっても最高の内容で、二人の才能が見事に結実しており、個人的にも好きな曲です。
音楽的に素晴らしい作品をリリースし続けていたチャランガですが、一方ではキューバで生活する若者のフラストレーションを代表するオピニオン・リーダーとして、その言動はいつも物議を呼んでいました。CDジャケットには意味深な表現を多用、遂にステージ上で裸になった映像がTV放送されたことがもとで6ヶ月の謹慎を言い渡されることになります。そして、全盛期にチャランガは、ダビとミッチェル・マサの2人を除いて全員が脱退し、その名も「チャランガ・フォレベル」という新バンドを発足するという大事件に発展してしまいました。
脱退前の旧メンバーでもう一枚制作したらどんなに凄かっただろうと思うと、その点は本当に残念です。チャランガ・アバネーラが活動を続ける限り、常にスタイルの変化はつきまとうものと理解しますが、どのような道をダヴィが選ぼうとも、チャランガ・アバネーラ黄金期を反映したもののひとつが「Tremendo Delirio」なのだと思います。
(福田 カズノブ ★ 2005/01/24)
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