2000年そこそこの頃、音楽雑誌などで 「ラテンのアルバムを2,3見繕って」といったオーダーが来るとリッキー・マーティンやグロリア・エステファン、はたまたシャキーラあたりを 「程よいラテン音楽導入アイテム」として、セレクトしがちだったものですが 私がチョイスする中に欠かせなかったのが、このバンボレオのセカンド・アルバム。
オープニングから「これは、単なるラテン音楽ではないな。何か新しいことが始まろうとしているな」という予感をもたらしてくれます。 付け焼刃的なフュージョンではない 音楽的にしっかりとした新しさであるというところが、このサウンドの感動的なところ。
「ラテン音楽の本質」を備えつつ、「聴き応えのあるサウンド」で、「このジャンルの発展を思わせる」点で、かなり広い層にバンボレオのよさは 伝わるはずだと、私は考えていました。 例えば、ファンク。例えばジャズ、R&Bなどのそれぞれの愛好家。そして「ちょっとラテンが気になる」といったレア・グルーヴ系の要望にも すっぽりとおさまるのが、バンボレオだと常に推してきたのです。
タイトルの「私は誰のまねもしない」というのも、意志を感じさせます。 女性ボーカリストが、「女性性」を失わず、むしろアピールしたままハードな印象をもたらす仕掛けにも、ぐっときます。
フロント・ボーカルのハイラ・モンピエ(リーダー、ラサロ・バルデスにアクの強さを抑えられ気味のところがまた好バランス)と、バンボレオのミューズ・バニア嬢(初来日時にインタビューの仕事で対面した時のこと。ノー・メイクにも 係わらず、あまりの美しさなので卒倒しかけました。「キューバの女性は、日々細部にわたってチャーミングであるように意識的なのよ」と、有難いご指導も)の二人が並んだ時の迫力、そのグラマラス感をイメージしつつ、全編をお聴きください。
バンボレオは、優秀なシンガー、作曲家を多数抱えてきたオルケスタなので、バンボレオ=ラサロ・バルデスとするわけにもいかないでしょうが、この際立っているバンド・コンセプトは間違いなくラサロの信念が生んだもの。
思うにラサロという、類まれな感性の持ち主は、自身の音楽的理想を それに伴ったビジュアルの中で、美しく具体化したかったのでしょう。 どちらかといえば、プリミティヴな要素を多く孕んでいる、キューバ音楽を扱う人が、こんなにもエレガントな手法で聴き手を攻めてきたことが 驚きでもありました。
(DJ KAZURU ★ 2005/02/28)
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