Hip Hop Cubanoとありますがいわゆる無機質でお経のようなラップを、攻撃的な発言と共に延々と続けていく、そういったタイプのものではありません。
非常に大人向けの、夜向きのゆるやかなHip Hop Cubanoです。
ALex,Amaury,Leo。男性3人のバランスも絶妙で、セクシーなボーカルワークに絡む低音が、これまたそそるという具合。
発売時の2001年というのは、すでにキューバ国内でも若者は、伝統的なキューバ音楽より米国的なラップのほうが気になって仕方がないそんな時期で、実際何組かのラップ・グループは人気を得て活動していたのですが実際に、米国サイドのヒップ・ホップに接している者の耳には物足りなさが付きまとうものが多かった、というのが正直な印象です(そこから数年でキューバ人のヒップホップも飛躍的に成長を果たしたわけですが)。
そこにきて、このPUNTOCERO。 相当クールです。発売から数年経過した今も、際立つものがあります。
彼らがここまで、完成された内容の作品を作れたのはキューバのコンテンポラリー・ミュージックを語るのに欠かせない、この人の力が多大であったと想像されるのです。
ヘルマン・ベラスコ。 イラケレで活躍、その後NGラ・バンダで名を馳せたホセ・ルイス・コルテスとともにプロジェクトに関わり、才能を余すことなく発揮。ルーツ的キューバ音楽でも、ジャズでも常に最先端の音楽への飽くなき挑戦を続けてきた功労者。作曲家、アレンジャー、サキソフォニストと色々な形で彼の名を「名盤」にクレジットされていますが、この作品はそういった人がプロデュースを務めているのです。
ヒップ・ホップときくと、どうしても情緒のかけらもない音楽、という印象をもちがちですが元来キューバで長く親しまれている曲には、本当に美しく、ノスタルジックなものが多いなどということも彼らのヒップ・ホップは、気づかせてくれるのです。
例えば11.オブセシオン。 曲のもつ、情熱と切なさが胸を打つ仕上がりです。素材の良さを引き出すアレンジに、きっと感服するでしょう。
世界的にも有名な曲5.サムライも同様。 やみくもに「新しさ」に向かったのではなく、音楽を研ぎ澄ませ、いかに男性3名のヒップ・ホップという形態を生かしていくか、にこだわった構成。
これは、ヘルマンの経験と、想像力なくしては 生まれ得なかった好盤です。
(DJ KAZURU ★ 2005/03/28)
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