NG LA BANDAのセカンドLP「En La Calle」LD4656とサードLP「No Se Puede Tapar el Sol」LD4709の2枚から9曲をセレクトした編集盤。 最強にして最高な時期のNG LA BANDAを聴くことが出来るCDとしてキューバン・サルサ、TIMBAの必聴アイテムであるばかりか、キューバ音楽史の上でも欠かすことの出来ない重要作のCD化として価値ある内容です。
リーダーのEl ToscoことJosé Luis Cortésは、1970年代にはLos Van Vanに在籍し、その後1980年代になってIrakereにフルート奏者として加入。作曲・アレンジも任され、ラテン・ジャズとソンの融合を目指した内容の仕事をします。 1985年には、Irakereに在籍しながら、Sigloというプロジェクト名で2枚の作品を発表。続いて1986年にはCicloというプロジェクト名で2枚の作品を発表します。Sigloはラテン・ジャズだったのに対し、CicloはNG LA BANDAのサウンドの原型ともいえるラテン・ジャズにサルサのテイストを加えた内容で、初めてこのLPを聴いた時はその発想に驚きでした。 そして遂に1988年、NG LA BANDAのファースト「No Te Compliques」がカセットで発表されます。NG LA BANDAのNGはNueva Generación、新世代という意味ですが、まさに次世代のスーパー・バンドの誕生だったわけです。
この時期のメンバーは、リーダーJosé Luis Cortésと後に名プロデューサーとして活躍するサックス奏者German Velazcoがアレンジを担当し、トランペットには、José CregoとChapottín。この4人はIrakereのメタル・セクションをそっくり持ってきた布陣です。ボーカルは、現在もNGの看板であるTony Caláと今やキューバを代表するアーティストIssac Delgado。ドラムスには、KLIMAXのサウンド・クリエイターGiraldo Piloto。ベースは、ティンバ奏法を形作ったともいえるFeliciano Arango。 彼らが、かつて一つのバンドで演奏していたことが今や信じられない程。まさにそうそうたる顔ぶれです。
José Luis Cortésという人は、バンドそのもののテイストを確立することより、キューバ音楽の未来を才能ある同志とともに創りあげようとしたのではないでしょうか。このCD「En La Calle」には、そんな新しい音楽を目指したきら星のようなサウンドが詰まっています。 Cicloプロジェクトでは、ジャズとサルサの強引なドッキングとも思えたものが、NG LA BANDAになったときには、ブラス・アレンジにジャズ・テイストを残しながらも、ダンス・チェーンとしての要素が増し、非常にこなれた音になりました。歌を聴かせる部分がより強くなっているのには、稀有な魅力を持ったカンタンテIssac Delgadoの存在が大きく影響したようです。
収録曲では、3.Necesito Una Amigaがキューバ国内では超ビック・ヒットを記録。この1曲が、その後10年間のキューバ音楽の方向性を決定したといっても過言ではない程の影響力がありました。リードをとったIssac Delgadoはこの曲をきっかけに大人気となり、当時のキューバ音楽界では異例のスピードで自分のオルケスタを持ち、ソロ・デビューを果たします。また、それまでのボーカル・スタイルはあくまでもマッチョだったのが、ソフトでどことなくフラット気味な歌唱方法が主流になっていき、後のPaulo F.G.やManolinなどの人気に繋がっていきます。サウンドは、ソンというよりは明らかにサルサを志向したものが増えていき、Charanga HabaneraやMedico de la Salsaの登場となっていくわけです。 この曲以外にも、メロディの綺麗な曲が目白押しで、演奏も15年以上も前なのに素晴らしいアレンジと怒涛のバンド・サウンドを展開しています。 まさにNG LA BANDAがキューバン・サルサ、ティンバの歴史に一石を投じた、最高傑作の1枚といえるでしょう。
(福田 カズノブ ★ 2005/04/18)
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