キューバにおいて、若い女性ばかりのオルケスタというと どうしてもセクシー路線であることを求められたり、ある種 キワ物的な扱いを受けることもあるようですが 本アルバムはそういったことを一切排除して聴いても 充実した聴き応えで満足のいく作品です。
本作品をプロデュースしている、Joel Dominguez Campos は、 ベーシストとしてもかなりのキャリアを持っていますが キューバのトップ・シンガー Paulito の名盤 「con la conciencia tranquila」(NUEVA FANIA 108)や 当Disc Reviewでもとりあげた、こちらも実力派 Osvaldo Chaconの 「salsa-afro cubana」(EUCD 1658 ARC) でも ディレクションを手がけていることからも分かるように 一(いち)ミュージシャンに留まらない、優れた才能の持ち主と思われます。
1曲目は軽快かつグルーヴィーにスタート。 ガツガツしない、まろやかなボーカル・ワークが心地よく響きます。 全体的に、こういった 「程よく、腰を揺らしてくれる明るい曲」が主役の作品ですが、 3曲目では、実に美しいデュエットのバラードが登場し、アルバムに 幅を与えてくれています。 このバラードに、ゲスト・ボーカルとして参加しているのは、実は イラケレ等でその実力を高く評価されている、Leo Vera ですが 高揚感たっぷりで、この辺りのつかみも、充分。
個人的に、本作で 最も強く思い入れを感じた曲は5曲目の「son de la verdad」。 キューバが生んだ偉大なる作曲家、セサール・ポルティージョ・デ・ラ・ルス の名作のひとつであるこの曲は、色々な人がカヴァーしたいと 願う曲の一つであると思いますが、キューバ人がキューバという国、 その文化に対する、切々とした愛情が見え隠れする楽曲です。
もともとの歌詞も、メロディも完璧なゆえにアレンジする側も 敬意を払わずにはいられなかっただろうと、想像されるのですが そういった背景に思いをはせなくとも、耳に快感を与えてくれる 楽しいアレンジになっています。
(DJ KAZURU ★ 2005/05/09)
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