Babalú Ayé 028
CHUCHO VALDÉS Y SU GRUPO IRAKERE
1997 EGREM
1.Solo Te Echaron Un Medio
2.Por Romper El Coco
3.Feliz Cumpleaños
4.Esta Noche
5.Tres Dias
6.La Comparsa
7.Cantata A Babalu Aye

キューバン・ジャズの重鎮、イラケレがはなったティンバ・アルバム。

イラケレはジャズを中心としながらも、ファンク、ロック、クラシック、ソン、アフロ、サンテリアまでも演奏してしまうバンドで、歴代参加ミュージシャンの力量は間違いなくキューバNO.1といえます。

リーダーはキューバの至宝、超絶テクニックを誇るチューチョ・バルデス。
以下、アルトゥーロ・サンドバル、パキート・デ・リベラ、オスカル・バルデス、ホセ・ルイス・コルテス、ヘルマン・ベラスコ、マラーカ、セサール・ロペス、アンガーなどの超一流とされる面々が、参加時期に差はあるものの、各年代でメンバーとして名を連ねていたのです。

1980年代中期(ホセ・ルイス・コルテス、ヘルマン・ベラスコ在籍時)にイラケレは、ジャズとサルサの融合を試み「Bailando Asé」(1985年)という作品を発表しましたが、その後イラケレを脱退したホセ・ルイスがNGにおいて試みたサウンドが、イラケレの提示した音楽を引き継ぐような形で展開されたことを考えれば、まさにこの「Bailando Asé」こそがティンバ誕生の源流だったと言えるのではないでしょうか。

そのイラケレが、ミュージック・シーン全体でティンバ全盛期へ向かう1997年に発表した本作は、自ら生み出したティンバという演奏方法に対して、イラケレからの再回答、とも受けとれるアルバムであり、実に素晴らしい内容となっています。

1.Solo Te Echaron Un Medioは、ボーカルのホセ・ミゲール(彼はイラケレを脱退後、2000年に「José Miguel y su Balanza (BIS CD-205)」を発表)作のティンバ。
3.Feliz Cumpleañosは、チューチョ・バルデス作のバースデイ・ソング。印象的なメロディとじわじわ盛り上げる演奏は素晴らしく、何度聴いてもわくわくする名曲です。
4.Esta Nocheは、ホセ・ミゲールとコロがからんでゆくスピード感のあるティンバ。ここでのホセのボーカルはパウリートそっくり。
5.Tres Diasは、チューチョ・バルデス作。哀愁のある美しいメロディ・ラインとドラマティックな演奏が素晴らしいナンバー。これも傑作曲です。
7.Cantata A Babalu Ayeは、2005年に惜しくも亡くなってしまった、ラサロ・ロスの参加作品。
ラサロ・ロスはサンテリアの重鎮で、曲名のBabalu Ayeは、アルバムのタイトルにもなっています。

チューチョ・バルデスは、7曲目のラサロとの競演を収録したことや、CDタイトルから、ティンバとは、サルサとジャズとサンテリアの化学反応であると言っているように感じます。ティンバという演奏スタイルはどうやって成立したのかは、様々な要素がありますが、確かにジャズとサンテリアが影響しているのは間違いありません。

一方、リーダーのチューチョ・バルデスはこの作品の発表とリンクした形で、同年に「Lo Mejor De La Timba Cubana」という記念ライブを行い、2枚のライブ盤を発表しています。
そのVOL.2(EGREM CD-0244)の収録曲「Un Hombre Casado」は、パウリートF.G.がリード・ヴォーカルで参加したバージョンで、凄まじいまでの盛り上がりを見せた演奏となっています。
このライブは、1997年当時までサルサ・ドゥーラと呼ばれていたハード・キューバン・サルサを、「ティンバ」と名付けようとした記念フェスティバルといえるもので、貴重な記録ですが、VOL.2の4曲目は傑作なので、本作と共に必聴です。

(福田 カズノブ ★ 2005/06/13)

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