ここを読む人の多くは キューバ音楽、なかでも現代的なそれに 耳が慣れていることでしょう。
「ラテンジャズの音は、 ジャズをやっている者には難しく感じられ ラテンを演奏する者の耳には易しく感じられる」などと まことしやかに、定義する言葉に出会ったこともありますが それは、クラーベが他のビートと絡み合う 複雑さをかぎ分けられる力による、ということなのかどうか。 その真偽はともかくとして ラテンの中でも、キューバ音楽に 慣れ親しんでいる人の耳が ある程度、特殊化している現実は否めないものがあります。
フランシスコ・アグアベージャ「ヒッティン ハード」は FILE UNDER に ラテン、ジャズ、そしてレア・グルーヴだと 明記してあり、実際その分類は正しいのです。 しかし、そこに示されている音楽を好む層のみならず キューバ音楽を聴きなれている、そういった 特殊な耳を持っている人に ぜひとも、聴いて頂きたいのです。 ジャズ畑の人にも、レア・グルーヴ志向の人にも 広く愛されている作品とは思いますが これをキューバ音楽愛好家が素通りしてしまうとしたら あまりにも勿体ない。
彼は一応キューバ出身ですが、 キューバ人であるとか コンガが超絶的に上手いとか、 誰それのLIVEにも参加していたとか そういった、プロフィールなど 一切なくても構わないのです。 彼は、テクニックを知ってほしいがために、こういった作品を 仕上げたわけではないでしょう。 マニアックにコンガの音だけを追ったりせずに ひたすらに、クールな世界観を感じてください。
アフロ・キューバンに精通する向きならば、気になるであろう ♯5のような曲も収められていますが 私の推薦曲は、むしろ♯3、♯6、♯7、♯8 といった 爽やかさの感じられる、レア・グルーヴ感たっぷりの曲です。 厭らしさギリギリ、でも なかなかにソウルフルな歌が、非常に効果的に使われており このブレンドの絶妙さに、はたまた感激。 まさにジャンルレスな、美しい音が生まれています。
(DJ KAZURU ★ 2005/08/29)
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