「バンボレオはキューバを代表するトップ中のトップ・オルケスタ」 そういう称号は正しいけれど、2005年現在の活動にスポットをあてて その評価を受け止めることは浅薄でしょう。 デビューからそれまでの軌跡、 すべてをたどればこそ、なぜトップと言われるのかも理解できるというもの。
美しく攻撃的な音楽を、ラサロ・バルデスが キューバのミュージックシーンに突きつけた、その証拠のように 存在するバンボレオのデビュー・アルバム。 まずは、この「Te Gusto o Te Caigo Bien 」を聴かなければ バンボレオを味わったことにはなりません。
本作品は、音楽もビジュアルも衝撃的なオルケスタの 登場を世に知らしめたわけですが ボーカリスト、作曲家としての、オスワルド・チャコンの魅力が 詰まっているという意味でも重要といえるでしょう。 バンボレオ脱退後、イギリスにおけるソロ活動の内容からも察せられるように チャコンのジャジーさは、ラサロ・バルデスのイメージする音に 非常にフィットするタイプのセンスです。 頼りなげなルックスに反して、革新的なユニット・バンボレオの屋台骨を 支えた人物のひとりであったわけです。
表題曲である♯3は、チャコンの手による曲ですが その美しさを耳にするにつけ、才能と才能の融合から 生み落とされた「新しいキューバ音楽」への興奮を覚えはしないでしょうか。 このたった1曲からでも、音楽の階段をひとつ上っていこうとする バンボレオの意志は明確に感じられるのです。
もちろん、表題曲に限らず、全編がバンボレオ調というしかない COOLさで貫かれています。
例えば♯8(TIM★CUBAマニアの耳にはジョージア・Cのヴァージョンが 聴こえてくるかもしれません)、こうした曲であっても、他の キューバのオルケスタでは絶対なしえない意外性のあるやり方で 美メロ度を高めることに成功しているのです。
このアルバムが録音されて10年近く経った現在ですが その歳月にあわせるように、キューバ音楽自体が 進化していったのかといえば、甚だ疑問です。 これよりも美しく、新しさに満ち、人々を魅了する音楽は いくつもないようなのです。 つまり、本作品は、バンボレオというユニットの 奇跡的な仕事のひとつとして 永きにわたり、語り継がれる名盤だということです。
(DJ KAZURU ★ 2005/10/24)
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