有名な曲であればあるほど カヴァーすることのハードルは高いものです。 オリジナルを超えた出来であることと 個性を出すことの両方を兼ね備えることは容易ではありません。 なんとかモノにして、アルバム・リリースに至ったとしても アーティスト自身の評価に至らず 結局その「有名曲」を扱ったことだけが、印象に残る作品となってしまう そんな悲しい結果になってしまった、というものも いくつか思い当たります。
キューバ音楽愛好家の視線をもって 眺めるならば、 本作品では、チャランガ・アバネーラの溌剌とした演奏で 親しまれている「Dime que te quedaras」 を取り上げていることが目に付きます。 ティンバに目のない方々にはダニー・ロサーダの 代表曲が入っているということだけでも、たまらないでしょうから 聞き比べの為だけに購入する向きもあるかも知れませんね。
カヴァーの出来? 悪くはないでしょう。 しかし、 比するならば♯6、♯9 こちらのほうがはるかに刺激的です。 この甘ったるいジャケ写とは異なるイメージで なんとも恰好いい。 冒頭のように、悲しい作品にしてしまいこんでしまうには 惜しいと思わせます。
RMM制作ですから、俯瞰で見れば本作品は ロマンティックな歌唱をもってサルサに取り組んだ とりたてて新しいことのない作品です。 ハードな仕掛けなどありません。 が、Corrine がそうであったように Isidro Infante組が この時期にリリースしたものの中には キューバ音楽に親しんでいる耳にも あれっと思わせる 「ティンバ愛好家のツボ」に訴えかける部分が まま見られるのです。
これは、2005年も終わろうという、今の時期には 逆に制作することが難しいタイプのアルバム・コンセプトです。 みんなして時代の兼ね合いに、試行錯誤した結果 ぽろっと産み落とされたような音楽ということでしょう。 ゆえに、こうした戦略で2枚目、3枚目が作られることは Yankoに限らずなかったわけです。
(DJ KAZURU ★ 2005/11/21)
|