カルロス・カロ率いるチャランガ編成のバンド、サボール・クバーノのセカンド・アルバムを紹介します。
この作品の聴き所は、バイオリンの音を中心にしたティンバ・テイストのサウンド。 これが意外と新鮮で気持ちが良いのです。 チャランガ編成は、バイオリンとフルートが入っていることが特徴で、取り上げる曲も CHA CHA CHÁ や DANZÓN が一般的。 キューバでは大御所のオルケスタ・アラゴンをはじめ、現在もいくつか名門バンドがその歴史を継続していますが、 この編成のまま、ティンバ・テイストを全面に押し出したバンドは初めてではないでしょうか。
カルロス・カロが生まれたのは、1965 年のハバナ。 7歳からバイオリンを学び18 歳で音楽学校を卒業、音楽教師もしつつ、 Orquesta Tipica Loyola をスタートとして、トラディショナルな様々なバンドに加入します。 そして、1997 年に自身のバンド Sabor Cubano を結成。 2000 年にはデビュー・アルバムを発表しています。
2作目となる、本アルバムは全体的に好曲ぞろい。
まず1曲目、Sol Y Soul( Disc Review ♯48 参照) のナンバーにも通じるシンセの響きが印象的なバンドのテーマ曲。 2曲目の Tu Mentirosa は憶えやすいメロディが印象に残るナンバー。 5曲目、有名曲ですが、DANZÓN のスタイルでの Silencio。 じわじわと盛り上がっていく6曲目。 都会的な哀愁を感じる 9曲目のCHA CHA CHÁ 。 このあたりが、中でも気にかかるところです。
ティンバ・バンドには不可欠のホーン・セクションの部分はバイオリンが優雅に担当し、リズム・セクションもティンバル、コンガ、ボンゴ、ギロというトラディショナルな編成。 ところが、ベースとボーカル、曲調はティンバ寄りになっているのです。 この独特の融合が他にはない味わいになっています。
キューバ音楽の伝統を踏まえた上で、新しい音を加えていくことは多くのミュージシャンが挑戦していますが、成功者は一握り。 また一つ、そんな挑戦をするバンドが生まれたことを歓迎したいと思います。
このアルバム、2005 年の掘り出し物の1枚といえます。
(福田 カズノブ ★ 2005/11/28)
|