イサック・デルガド、ロス・バンバン、 チャランガ・アバネラ、パウリート.F.G... キューバのティンバが好きな人ならば 泣いて喜ぶような曲が並びますが これ、ただのカヴァー集にあらず。
とてもとても、キューバ音楽に愛情を持っているであろう デンマークのバンドによる 「ひとひねりの効いた」作品なのです。
正統的にカヴァーした曲もありますが 例えば。♯7(元はアスカル・ネグラ)などの 後半部分などは原曲を意識すれば 迫力を持つことに重点を置きそうなものですが、さらりと かわして心地よいグルーヴを出したあたりに好感が持てますし、 ♯6(元はチャランガ・アバネラ)で Tembaをラガな解釈に持っていったところも ひたすらに「恰好いい」と感じさせるものがあります。
「キューバン・テイストに溢れた音楽を演奏する外国人バンド」。 こうした存在はもはや、ヨーロッパであろうとアジアであろうと 各国にいてもおかしくないでしょうし、 その全てを把握しきれるわけもありませんが、 「キューバン・テイストに溢れた音楽を演奏する外国人バンド」 としては、抜きん出ているのがこのバンドです。
キューバ音楽に憧れるミュージシャンならば キューバ人のように演奏してみたい、それは 悲願のようなものかも知れません。
しかし、キューバのトップ・ミュージシャンの多くが 「キューバに生まれ、育ったからこそ こうした音楽を表現するに至ったのです」と 発言していることを一方に思えば、 キューバの外側からキューバ音楽を愛でるということに 落としどころを見つけることも 在りようの一つだと思われます。
ラテン・ダンス・バンドは、その辺りの 均衡のとり方が絶妙なのです。
キューバ人のような歌い方に拘らなかったこと。 ゆえに 力の抜けたボーカル・ワークはジャジーな魅力を 醸し出すことに成功しています。 楽曲のよさを忠実にアピールしながらも 自分達の言葉を持ったこと。 キューバの言葉でもなく、世界共通の英語でもない 言語で勝負をかけた曲が数曲でも収められたことは 評価に値するでしょう。
そして、敵わないことは敵わないこととして 甘んじたこと。
ここが最大の彼らの落としどころだったのだと思うのです。
いろいろと、要素はあるのでしょうが バンド内に、かなりセンスの良い人物がいると察せられますし 結果的に素晴らしいアルバムになっています。 原曲よりもよいとするには、語弊がありそうですが ラテン・ダンス・バンドのバージョンで イサックなり、パウロなりのバンドが演奏してくれたら それが最高に 私の、好きなタイプの音楽になるのだろうかと 想像したりもします。
さて デビュー作にて、これだけの有名曲をカヴァーしきってしまい これでは次の手がなさそうに思う向きもありますでしょうが、 ♯4が、今回のアルバムの強力な楽曲群においても ひときわ光を放っていることを思えば 完全オリジナルの次回作というのも、充分に期待の範疇でしょう。
(DJ KAZURU ★ 2006/01/02)
|