フアン・パブロ・トーレスというと ”キューバにおいては エストレージャ・デ・アレイートの中心人物にして その実績&功績には多大なものがあり また、90年代に米国に渡ってからも様々な影響を ミュージック・シーンに及ぼし・・・”と こんなふうに語りたくなりますが、今回は 70年代の彼の仕事、ほんの一部分にだけ 目を向けてみましょう。 本作はラファエル・セバーグ氏によるコンピレーション おもに1974年に制作された「SUPER SON」を中心に 編まれています。
トロンボニスト フアン・パブロ・トーレス。 70年代には非常に刺激的な試みに 手を染めていました。
ゆえに、本作はトロンボーンの技量を味わうための 音楽に収まりきっていません。 作曲者としてもアレンジャーとしても能力の際立っている 人物ならではのやり方ですが、それにしても 30年以上も前に、こういった革新的な 音を作っていたことに驚愕します。
彼が「super son」 はたまた「super tumbao」と 名付けた、これらの作品群は 明らかにキューバのソンを原型としつつも 発想の広がりにはただならぬものがあります。 女声ボーカルやストリングス ひずんだギター音の効果も高く どこまでもCOOLに展開を続けます。 例えば、私のフェイバリット ♯9や♯11を一聴しただけでも 強烈な「洒脱感」に圧倒されるでしょう。 彼が(キューバ)音楽を いかに自由に捉えていたかが分かろうというもの。
エレクトリックなアレンジを 多用しつつも、薄っぺらさはありません。 プリミティヴな魅力を排することなく 田舎臭さからは脱却。 天才的な”スーペル・ソン”の世界。 このコンピレーションが出回った当時 ジャンルを超えて”DJ”なる人種が群がり アナログ盤の値段を高騰させていった 現象にも納得です。
音楽とは いつの世も、彼が考えたように 刺激的で可能性を求めて 羽ばたくべきものなのですね。 2006年を迎えたいま、なお J.P.T.の音楽が 近未来のそれに聴こえてなりません。
(DJ KAZURU ★ 2006/01/16)
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