キューバのポピュラー音楽史にその名を確かに刻んだバンド、DAN DEN の作品を紹介します。
このバンドのリーダーはピアニストのファン・カルロス・アルファンソ。 彼の音楽キャリアのポイントは、1985 年、彼が 24 歳のときに名門バンド、オルケスタ・レベに抜擢されたことから始まります。 そのときの興味深いエピソードが本作品の日本語ライナー・ノーツ(岩村健二郎氏)に載っているので紹介します。 「エリオ・レベは、二十歳そこそこのピアノ弾きがソンを弾きこなすことは不可能と乗り気ではなかったところ、バンドの譜面も見ずに弾きだしたそのテクニックとサボールに圧倒され、即入団を決定した。」という内容。 その後、レベは生まれ変わったようにヒット曲を連発。まさに彼の入団が名門バンド復活の起爆剤になったわけです。
そして1989 年、ファン・カルロスはサウンドを更に追求するために独立し、自身のバンドDAN DEN をスタートさせます。
ちょうどその当時は、キューバ音楽の一大変革期で新しい音楽を模索して多くのミュージシャンがしのぎを削っていたときでした。 DAN DEN のサウンドは斬新さと分かりやすいポップさが絶妙な割合だったのでしょう。デビューするやいなや、新世代のサウンドとして脚光を浴びていた NG LA BANDA をも凌ぐ勢いで人気をつかみ、一気にNO.1 の座に上りつめます。
それまでは、老舗バンドが若手メンバーを補給してそのサウンドを守っていくというというのがキューバ音楽界の定例だったところに、若手バンドがいきなりデビューして人気を獲得するという離れ業を演じてしまったわけです。
この事実は、それまで保守的ですらあったキューバ音楽界に変革のきっかけを作りました。その後、次々に若手中心のバンドが誕生。イサック、パウロ、チャランガ・アバネーラの時代が到来するのです。
現在の DAN DEN は当時ほどの人気はありませんが、マイアミ移住組みのマイアミ・ダン・デン、そして国内ではハバナ・シティ、ハバナ・パワー・バンドと関連バンドを数多く生んで影響力を与え続けています。
楽曲をみてみると、 1.は DAN DEN のテーマともいえるリトモ・ダン・デンというリズムのナンバー。 3.は、パウロ F.G がボーカルをとっているナンバー。本作品の目玉曲の1つ。 7.は、印象的なメロディとはじけるリズムで聴かせるデビュー当時大ヒット曲。 全編を通して、ファン・カルロスのピアノが曲の中心にあって、ビートとメロディの両方を演出しています。
本作は、LP 「 HAY UN OJO QUE TE VE 」 ( 1990 ) 、「 SI DAN DEN 」 ( 1991 ) 「 MAS ROLLO QUE PELICULA 」からのピック・アップと新録音2曲のいわばベスト盤だけあって、どの曲も聴き応えがあります。
岩村氏のライナー・ノーツも素晴らしく、1990 年前後、黄金時代の DAN DEN を堪能できる1枚といえます。
曲が一部重複していますが、「 Dale Al Que No Te Dio 」( EGREM CD-0057 1993 )「 Viejo Lazaro Y Otros Exitos 」( Qbadisc QB9009 1993 )「 Grandes Exitos 」( EGREM CD0495 2001 )もこの時代の作品集です。
(福田 カズノブ ★ 2006/01/30)
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