このユニットに象徴されるセルジオ・ジョージの プロデュース業は、ある種エポック・メイキングな出来事で それが(戸惑いつつだったとしても)N.Y.のみならず 全世界のラテン・ミュージック・シーンに色濃く影響を 及ぼしたということは、否定しようのないことだと思うのです。
ラガ、サルサ、hip-hop をベースにし 何よりも 「リアルな若い世代の音楽」 として 放たれた、新しいラテン音楽の登場。 そんなセルジオの音を はっきりと示したのがDLG。
セルジオが手塩にかけ育て上げた メイン・ボーカリストのヒューイ・ダンバーは 高い音域で印象を 大きく刻み付ける歌手としてはもちろん ルックスの面でも申し分ありません。 そして 二人のラッパー、フラガンシア、ダ・バルバと 並んだ時の「黒いムード」は、明らかに 「旧サルサ・マーケット」からの脱却を 示しています。
本作において、随所にあらわれる「ラップ・パート」ですが まるで唐突な感じがなく、バランスが見事。 新しさだけでなく 完璧に「ジャンルの調和」に成功しているということは 何よりも、まず称えられるべきことでしょう。
「サルサ+α の融合」 それ自体は、誰もが容易に 「そんな音楽あったらいいな」と 思いつくことなのですが 実際に「美しい音楽」として成立させることが 出来るか否か、が問題なのです。
セルジオは、歌手に微細な指示を与えることで 有名のようですが、彼自身が キューバ音楽も ブラック・ミュージックもレゲエも 徹底的に研究したのだと思われます。 その結果の ミクスチャー・サウンドなので、薄っぺらくなく 説得力のある音楽になっているのでしょう。
さて、本作には♯1を筆頭に 大ヒットに発展した曲が多数収められていますが TimCuba 的、推薦曲を挙げるとするならば ♯2になりますでしょうか。
これは Disc Review ♯47 で紹介した バンボレオの作品にも 収められている”La Soledad”と同曲ですが 「効く」女声コーラスの使い方も美しく 劇的な切なさが漂う、アレンジが感動的です。 派手な曲よりも こういった曲でこそ、このユニットの 真髄に触れられるような気がします。
同曲は、色々な歌手に取り上げられていますが その楽曲自体の良さを感じ取っていただくためにも バンボレオ・ヴァージョンだけではなく イタリアの女性歌手 Giorgia.Cの" La Solitudine" も 一聴することを薦めておきます。 聞き比べて頂くことで、Sir George プロジェクトが 目指した音楽の一片なりが 見えてくることもあるのではないでしょうか。
(DJ KAZURU ★ 2006/02/20)
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