今回は、2005 年リリースの作品 「 Luchando con Fé 」 で日本のキューバ音楽ファンにも広く名前が知られるようになったマラビージャ・デ・フロリダを紹介します。
このバンドの結成は1948 年。 キューバの中央から少し東部よりのカマグエイ州フロリダで、半世紀に及ぶ活動を続けている老舗バンドです。 バンド編成は、バイオリンとフルートを中心としたチャランガ。ダンソンやチャチャチャ、そしてソンをカマグエイの人々のために演奏し続けてきたのでしょう。
1980 年代に入ると、アダルベルト・アルバレスやシエラ・マエストラがソンのモダン化を進めていたのに同調し、 アラゴン系チャランガ・サウンドのモダン化を進める中心的バンドになっていきます。 LP も数多くリリースされ、1980 年代はかなりの人気がありました。
そして 1980 年代後半、 マラビージャ・デ・フロリダに若き才能マノリート・シモネーが加入します。 彼はバンドの中でめきめき頭角を現し、ディレクトールを任されるまでになりますが、1995 年に自身のバンドを結成し独立。 そのまま、在籍していたらマラビージャスを確実にキューバのトップ・バンドにしていたことでしょう。
この当時から現在までの音が CD で聴けるのは以下の 5 枚。
「 El Agua Coge su Nivél 」( 1995年Barbaro B242 ) は、マノリート・シモネー在籍最後の作品。 現在、最高のミュージシャンの1人と評価されているマノリートの原点を CD として聴くことが出来る貴重盤です。
「 Levantate y Baila 」( 1995 年 CARIBE CD9466 ) では、ファンキーで、バイラブレなサウンドが全開しています。 この頃はバンドも充実期に入っていたようで、1990 年代の代表作といえましょう。 ティンバ流行の波が来なければ、 彼らのサウンド、名付けてハード・チャランガがキューバを席巻していたかもしれません。
「 Ritmo Oriental y Maravillas de Florida 」( 1995 年 SD50 CDS9073 ) 同スタイルの人気バンド、リトモ・オリエンタルとのカップリング編集盤。
「 50 y más Maravillas 」( 1999 年 WAG331 ) 結成50周年記念盤。 この作品でディレクトールが交代し、 以降、ピアノの Norberro Puentes がマラビージャスを率いていきます。
「 Vieja , Pero se Mantiene 」( 2000 年 ENVIDIA A70 7012 ) Norberro Puentes の志向である 「老舗バンドを若者向けの人気バンドに再生すること」がはっきりと出てきた作品。 後にチャランガ・アバネーラに移籍したレオニ・トレスがボーカルで参加しています。
そして最新作 「 Luchando con Fé 」 ( 2005 年 ) では、 更にバンド全体が世代交代し、ティンバ・スタイル中心のサウンドに大変身。 ハバナのヒット・チャートにもエントリーされる人気バンドになりました。
名前を知らない人は新しいティンバ・バンドと勘違いしてしまうところですが、 永年培ったバンド・グルーヴは只者ではなく、 ベテランが要所を固め、若手が最新のサウンドを展開しています。 伝統と最新の融合がキューバ・バンドの長寿の秘密ならば、 まさにマラビージャ・デ・フロリダは、その代表バンドの一つでしょう。 今やクラシカルともいえるチャランガ編成を維持しているところも、バンドの伝統を重んじている証拠です。
この作品でお勧めなのは、 6. No Me Arrepiento、 7. No Te Cojas Lucha、 11. Ya no Puedo Parar あたり。 バイオリンの音色とティンバのリズムが独特なグルーヴを生み出し、充分流行のティンバとして楽しめる楽曲です。
今回は入手しやすいことから最新作をピックアップしていますが、 「 El Agua Coge su Nivél 」 はマノリート・ファンに、 「 Vieja , Pero se Mantiene 」 はチャランガ・アバネーラのレオニ・トレス・ファンに、 最新作が気に入った人は、入手が少し困難ですが、 1995 年の傑作 「 Levantate y Baila 」 も 一聴していただきたいものです。
(福田 カズノブ ★ 2006/03/06)
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