レーベルRMMがこの時期量産していた ”R&B風味の濃いSALSA”を代表するような1枚。 そんな一連のRMMものにおいても、トップクラスの 完成度を誇れる内容。 旧来のサルサ・ミュージックとは、異なる立ち位置で 当時、キューバにおいて爆発的に成長していた 黒いラテン・ダンス・ミュージック”TIMBA”に負けじと 若い世代にもアピールできる「新たなサルサ」を 生み出そうとしていた動きを感じます。
ワイクリフ・ジーンをひきこんで マドンナの大ヒット「ラ・イスラ・ボニータ」(♯2)を カヴァーしてみたり ラップを大胆に混ぜてみたり それを歌うコリーンが何より若々しく、「いかにも」な ラティーナではないルックスであるという点も、 こうした音楽の路線に 適していたというところでしょう。
彼女のボーカル・スタイルは 真っ直ぐさが気持ちよい、かなりの 「こみあげ系」。 SOULな人に愛される何かを持っている人です。 多くはサルサ・ベースの曲であるにもかかわらず 「涙の女心系R&B」の名曲を聴いているときのような 印象をもたらしてくれます。
こうした新機軸を感じさせる人選とアイディアで 本アルバムを作り上げたのは、プロデューサーである イシドロ・インファンテの技量によるところが大きいでしょう。 彼のようにサルサを愛し、深い理解でその音楽とともに 歩んできた人だからこそポップなアレンジに踏み込んでも 突拍子もない感じにならないのです。 どうしたら、サルサに新鮮味を与えて 再び刺激的な音楽に出来るのか、優秀な音楽家が 考え込んだ結果が、この2000年前後の 「新解釈SALSA」だったのでしょう。ですから 充分に現在も鑑賞に堪えうるクオリティです。
特に♯4、♯8、♯9 このあたりは、切なさを訴えかけるコリーン嬢の 女性らしい歌い回しと、ラティーナ特有の熱情というものを 共に楽しめるので気に入っているトラックですが ♯8 は曲そのものの魅力が際立っており イシドロのアレンジにより、それがさらに人の耳をひきつける 一曲となっています(隠れた名ユニット リカルド&アルベルトも、同曲を取り上げていますが こちらも秀逸。併せて推薦しておきます)。 これが、私の考える「美メロ・SALSA」に ぴったり当てはまるような曲で そういった曲が収まっているということだけでも これは名盤なのです。
(DJ KAZURU ★ 2006/03/27)
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