キューバには星の数ほどミュージシャンがいて、素晴らしいバンドも数多いというのが定説ですが、CDリリースは日本や欧米と比べて悲惨なほど少ないのが現状です。それは、国営音楽公社の緩慢な仕事ぶりと、外国資本の音楽レーベルがセールス的に維持、継続できないことが背景にあるからですが、2000 年前後は例外的にリリース・ラッシュが続きました。 それは、1997 年の 「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」 がきっかけとなり世界中の音楽資本がキューバに注目する中、伝統的な「ソン」ばかりではなくコンテンポラリ-なキューバ音楽も扱っていこうとするレーベルが数多く立ち上がったことに起因しています。
ドイツの Cuba Chévere レーベルもその中の1つ。 Chispa y Los Cómplices 、Son Candela 、そして今回紹介する Bakuleyé のセカンド作を立て続けにリリースし、イサック、チャランガ、パウロなどのビック・ネーム以外に、良質な新バンドをシーンに供給していました。
Bakuleyé は 1998 年にデビュー。 ファーストCD 「 Fiebre del ULA ULA 」 ( Ahi-Nama Music 1019 ) では、親しみやすいメロディを中心にポップなティンバ系サルサを演奏し、タイトル・ソングはビデオ・クリップにもなってヒットしました。後に、チャランガ・アバネーラのカンタンテに抜擢され、バンボレオを経て独立した、Dantes が在籍していたのはこの時期です。
そして、2000 年、Cuba Chévere レーベルからリリースとなったセカンド 「 Timbantón 」 は良質なティンバ・アルバムとして評価すべき作品となりました。
1. Timbanton はアップ・テンポのタイトル・ソング。勢いが感じられます。
2. Que Culpa Tengo Yo はキューバン・サルサ。美しいメロディとシンプルなベース・ライン、流れるような展開が、他のティンバ・バンドにはない魅力を放っています。
3. Pelona はソンをアップ・テンポにアレンジし、ティンバの風味を加えたナンバー。このバンドの音楽的ルーツがジャズではなくソンであることがわかります。ゲストには元チャランガ・アバネーラのユリエンが参加しています。
4. Algo Mas は切なく盛り上がっていく曲調が素晴らしい作品。ふわっとした音色のシンセをリズム楽器として使ったアレンジはこの当時斬新で、ティンバの新たなスタイルを展開しています。
5. La Suiza は明るくリズミカルなナンバー。
6. El Plastico は、4 と同様、こみあげ系のサルサです。このバンドはライブで勝負がちなバンドとは違い聴きこめる楽曲が多いのが特徴といえます。
7. Mala Costumbre はメレンゲ。ファーストでもメレンゲ調なラップ・ナンバーがありました。
8. Conquista Tu Hombre と 9. Anor Del Bueno はミディアム・スローなティンバ。ゆったりとした曲調の中にもティンバを感じさせるエッセンスが入っています。
10.Algo Mas ( Balada ) は、4.のバラーダ・バージョン。クバニスモのメンバーがサックスでゲスト参加しています。
11. Gangarreo のエンディングは、中盤からファンキーに盛り上がるナンバー。全体の構成は、まるでコンサートのようです。
全 11 曲、粒ぞろいといえる作品ばかり。けしてテクニック志向ではない演奏は、まとまりがあって、これから人気バンドに成長しそうな内容でしたが、このセカンド以降はリリースがばったりと途絶えてしまいました。バンド自体はハバナでライブ活動をしているので存続はしていますが、CDリリースがないのが本当に残念です。
(福田 カズノブ ★ 2006/05/08)
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