Sin mirar atrás 083
Leonel Limonta y Azúcar Negra
2004 EGREM CD0650
1. 3 de Azúcar y dos de Café
2. Se Fue la Paloma
3. Loco por tí
4. Vengo de Estreno
5. Mi Única Vida
6. Sin Mirar Atrás
7. Pregúntale a tu Padrino
8. A la Negra le Gusta
9. Tú y yo, Una Misma Cosa
10. Sal de la Esquina
11. Te Traicionó el Subconciente
12. Sin Mirar Atrás ( balada )

Azúcar Negra の 2004 年に発表されたセカンド作を紹介します。

人気絶頂だった Bamboleo から独立した Leonel Limonta が Haila Monpié と共に結成したアスーカル・ネグラ。
ヒットを連発していた時に発表となったデビュー作 「 Andar Andando 」 は、楽曲も粒ぞろいの傑作アルバムでした。

その後、ハイラはアスーカル・ネグラから脱退しソロになってしまうのですが、実はハイラ在籍時の録音で、幻の音源が存在しているのです。
それは 「 Vengo de Estreno 」 というタイトルの 6 曲入りのミニ・アルバム。ハイラが脱退したためか、フル・アルバムとして正式発売には至りませんでした。

その後、タニアが加入して再出発となりますが、彼女もバンボレオに引き抜かれ、結局フロント陣は全員チェンジとなってしまいます。
そしてバンド・メンバーで迷走するアスーカル・ネグラは、このセカンド作を発表するまでなんと 4 年を要してしまうのです。

アスーカル・ネグラとバンボレオは、在籍メンバーが重複しているということ以外にも女性ボーカルをメインにしているところなどバンド編成も似ていて双子のような関係ですが、音楽的にはかなり違いがあります。

バンボレオの Lá zaro Valdés は、ジャズをベースに演奏やアレンジ主体の音作りをするのに対し、リモンタはソンを曲作りのベースにしていて、そこにティンバのアレンジを取り入れ、サルサ・ティンバのリズムによるポップスを実現しているのです。

リモンタのキャリアは、古くは 1980 年代後半、チャランガ・アバネーラ加入前のミッチェル・マサの在籍していたバンダ・メテオロで曲を書いたのに始まり、その後チャランガ・アバネーラ、チャランガ・フォレベルに作品を提供、バンボレオの大ヒット曲 「 Yo No Me Parezco A Nadie 」 を書いて一躍名作曲家として脚光を浴びます。

そして自身のバンドであるアスーカル・ネグラを立ち上げるのですが、デビューから6 年間で発表にいたったのが、たったの 2 作という状態が続きます。
音楽産業が成熟していないキューバとはいえ実力からしてあまりにも少なく、キューバ音楽界の損失の1つといえるでしょう。

ライブ活動が中心のキューバでは、バンドを率いるリーダーは、力の関係上そのほうがよいのか、超絶の演奏者やアレンジャー、人気あるカンタンテであることが殆どです。
アレンジや演奏は人に任せるスタイルのリモンタは、リーダーとしては弱いのかもしれません。
ところが逆に楽曲作りでは、メロディと歌、そしてバックのバランスが素晴らしく、ティンバ失速と言われる昨今、リモンタの存在は貴重であるように感じます。

各楽曲を見ていくと

1 曲目 「 3 de Azúcar y dos de Café 」 は、ピアノ、ベース、シンセがパーカッションと共に 「 点 」 のリズムを刻み、コロとトランペットがボーカルのメロディを盛り立てる構造になっています。このアレンジはアルバム全体の特徴でもあります。

3 曲目 「 Loco por tí 」 は、男性ボーカルが途中で入るナンバー。このアルバムのアスーカル・ネグラは女性ボーカルが主体ですが、ぜひ歌える男性ボーカリストが必要と考えます。

4 曲目 「 Vengo de Estreno 」 は伸びやかなメロディとドラマティックに展開するアレンジが最高なナンバー。ミニ・アルバム 「 Vengo de Estreno 」 にもハイラ・バージョンが収録されていたリモンタの代表曲の1つです。

6 曲目 「 Sin Mirar Atrás 」 は、本作のハイライトといえるタイトル・ソング。

7 曲目 「 Pregúntale a tu Padrino 」 は、ねじれ感が強く出た作品。ソンをベースにしたティンバといえます。

10 曲目 「 Sal de la Esquina 」 は、曲中に何度もギア・チェンジが入り、ボーカル・ソロとモントゥーノが交互に展開する作品。リモンタの作曲センスを感じさせる曲です。

11 曲目 「 Te Traicionó el Subconciente 」 は、ミニ・アルバム収録曲。ライブ向きなドライブ感溢れるナンバーです。

そのほか 9 曲目、12 曲目のバラーダも含め、全曲聴き応えのある充実作になっています。アルバム全体のクオリティの高さは、音楽監督を務めたホアキン・ベタンコーの手腕によるところでしょう。

演奏の腕を聴かせることを重視したティンバでもなく、伝統を継承する重厚さを追及しているというわけでもない。またライブ・パフォーマンスや人気のフロント重視でもないアスーカル・ネグラの存在を言葉で説明するには難しい部分もあるのですが、こうして形になっている作品の素晴らしさはキューバ音楽界でも随一。

それを作り上げているリモンタなる人物は、最も支持したいアーティストの1人です。

(福田 カズノブ ★ 2006/07/03)

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