演奏技術が向上した分音楽が良くなるのであれば、10 年前の 1996 年より 2006 年の現在の方が素晴らしい作品だらけになるはずなのですが、 多くのバンドでデビュー時の方が素晴らしい作品を輩出しているのはなぜでしょうか。 それは、ポピュラー音楽が演奏能力だけでなく、楽曲、アレンジ、ボーカルの要素から出来ているからでしょう。 ハバナの Conexion Salsera もそんなバンドの1つです。
1995 年のデビュー作 「 Me Desatina 」 と 2 作目の 「 Muy Caliente Para Ti 」 はコンテンポラリー・キューバンが、キューバン・サルサからサルサ・ドゥーラと呼びかえられた時期の良質アルバムでした。
この2枚の作品が良い理由はただ1つ。
作曲とボーカルで参加している Daniel Lozada の存在です。
今回は粒よりの作品が多いセカンド作 「 Muy Caliente Para Ti 」 を取り上げたいと思いますが、 この作品では、全 11 曲中 7 曲が彼の作品で、 その どれもが印象に残るメロディとビート感を持っているのです。
リーダーはベーシストのNicolas Sirgado ですが、 事実上ダニー・ロサーダのバンドであったともいえるでしょう。
この時期のコネクシオン・サルセーラの特徴はリズムがシンプルなこと。 綺麗なメロディとそれを補完するコロとピアノ、ホーン・セクションが 重層になって繰り出し、グルーヴを創り出しています。
これらの曲調は、ダニー・ロサーダの作曲スタイルで、 この流れは Charanga Habanera で開花することになります。
彼はコネクシオン・サルセーラを脱退し、 全盛期の第一期チャランガ・アバネーラに移籍。作曲とボーカルを担当して、キューバン・サルサの歴史的傑作 「 Tremendo delirio 」 を世に送り出しています。 そして、ソロになって2枚の作品をリリースし、現在はマイアミ在住となって大きくは活動していません。 彼の現在の状況からみても、在籍時代のコネクシオン・サルセーラは今や貴重な音源といえるのです。
楽曲の聴き所は、5 曲目と 10 曲目。
ドラマティックな展開とグルーヴを堪能できます。 彼の才能は、このコネクシオン・サルセーラの 2 枚とチャランガ・アバネーラの 1 枚、ソロの 2 枚、全 5 枚の作品で終わるものではなく、まだまだアルバムを出せる実力を備えています。
一方の本体のコネクシオン・サルセーラは エンビーディア・レーベルから 2 枚発表し、 他にジャズ・ユニットのアルバムもリリースしていますが、 ダニー・ロサーダ在籍時を凌ぐ作品はいまだに生み出すことが出来ていません。
コネクシオン・サルセーラの作品を聴くと、音楽が演奏能力だけではなく、作曲の良し悪しに大きく左右されていることをあらためて感じてしまいます。
コネクシオン・サルセーラのセカンド作 「 Muy Caliente Para Ti 」はクラシック・キューバンにエントリーされるべき傑作ですので、 購入機会があればぜひ一度聴かれることをお勧めします。
(福田 カズノブ ★ 2006/08/07)
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