Los Van Van に在籍後、ソロやバンドで成功した人には José Luis Corté s、Changuito、 Pedro Calvo、Cesar”PUPY”Pedroso など キューバ音楽を代表するミュージシャンが数多くいますが、 Ángel Bonne もその中に入る 1 人。
今回紹介する 1995 年発表のソロ第 1 作目は、一般的に 余り知られていない作品ですが、その内容の素晴らしさや 参加メンバーから、1995 年当時のロス・バン・バンの 裏作品といってもよい隠れた名作です。
1990 年代前半の ロス・バン・バンのフロント陣は、ペドロ・カルボ、マジート そしてアンヘル・ボンネの 3 人。 アンヘル・ボンネには、ペドロ・カルボのように男っぷりのよさや、 マジートのようなカリスマ性はありませんが、音楽的な面では 2 人にはない才能を備えていました。
その才能とはまず作曲能力。 ロス・バン・バンは、デビュー以来、 Fuan Formell と Pupy という名作曲者 2 人で 曲の大半を書いているので、 よほどの楽曲でないと採用されないのが通例ですが、 1993 年発表の Los Van Van 「 AZUCAR 」 では 「 Esperando Llamada 」 と 「 Tú no colabores si no es Contigo 」 の 2 曲を、1994 年発表の 「 Lo Ultimo En Vivo 」 では 「 Pura Vestimenta 」 を書いています。 バン・バンに加入したばかりの新人で いきなり作品を提供できたのは、アンヘル・ボンネの作曲能力が 高かったことの証明といえるでしょう。その後、 アンヘル・ボンネは自身のソロ作 「 Pa’decir lo que yo siento 」 を発表し、 バン・バンからは 2 作に参加しただけで正式に脱退します。 そして彼の後釜には、Pachito Alonso y sus Kini-Kini からロベルトンが加入。 1990 年代後期バン・バンがスタートするわけです。
今回紹介する作品は、全 10 曲中 8 曲が彼のペン。 そればかりか、サックス、ベース、ピアノ、シンセと マルチな才能を披露しています。 参加メンバーもトロンボーンにバン・バンの Hugo、 トランペットに元 NG の El Grego、 ティンバレスに Samuel Formell、 フルートに元バン・バンの Orlando Canto、 コロには意外にも Michel Maza、そして アレンジは Fuan Formell というライン・ナップで、 ミニ・バン・バンといった様相。
録音状態やシンセの音色に 古さを感じる面もありますが、それを超える 素晴らしいメロディがこの作品には詰まっています。
1 曲目は、タイトル・ソング。ミディアム・テンポのキューバン・サルサです。
2 曲目は、素晴らしいメロディと彼の暖かいボーカルが馴染むナンバー。 後半のモントゥーノは控えめながらぐっときます。
4 曲目は、アンヘル・ボンネ節ともいえる名曲。 肩の力が抜けた緩やかなテンポのキューバン・サルサです。
7 曲目は、Michel Maza がコロで参加しているナンバー。
9 曲目は、切々と歌い上げる曲。 他のバンドがアレンジを変えてカバーすれば、また 素晴らしくなる曲ばかりですが、実現していないようです。
10 曲目は、この作品のハイライト。 Samuel Formell、El Grego 参加していることもあって、グルーヴも最高。 アンヘル・ボンネが生んだ傑作曲です。
作品を通して聴くと、 今のティンバにはない、まったりとした 落ち着きの中にある心地よいグルーヴが 耳から入ってきて身体を包んでいく感じになります。
ティンバの全盛期前の 懐かしいキューバン・サルサ。けして風化しない 美しい音楽がここにはあります。
(福田カズノブ ★ 2006/08/21)
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