Pablo Fernández Gallo ( パウロ F.G. ) の 2006 年に発表となった 久々のサルサ・アルバム 「 Un Poquito de To 」を紹介します。
パウロ F.G. の CD キャリアは自身のバンドでは 8 作で、 リード・ボーカルを務めた OPUS 13 での作品を加えると全 9 作。 各作品のサウンド傾向は年代によって大きく 3 つに分かれています。
第 1 期は、OPUS 13 時代の 1991 年 「 Reclamo por tu Cuerpo 」 ( Disc Review 032 ) と Paulo y su Elite としてのファースト 1993 年 「 Tu no me Calculas 」。
オプス・トルセのリーダー Joaquin Betancourt とパウロ・イ・ス・エリーテでディレクトールとして昇格したJuan Manuel Ceruto のアレンジ、そしてパウロの歌と作曲が絶妙にブレンドした時期です。この頃のパウロが最も好きだという人がいてもまったくおかしくない程、ロマンチックで洗練されたサウンドでした。
続いて第 2 期は、2 作目の 1995 年 「 Sofocándote 」 と 3 作目の 1997 年 「 El bueno soy yo 」 、そして1997 年の名盤「 Con La Conciencia Tranquila 」 ( Disc Review 010 ) までの 3 作品。
パウロのバンドがハードに変身した時期で、ライブ・バンドとしては絶頂期。人気・実力共にハバナでトップの座にありました。黒いソウルフルなティンバ・サウンドに、甘いパウロの歌声がマッチしているとことが魅力といえます。
第 3 期は、5 作目 2000 年 「 Una Vez má s.. por Amor 」 と 6 作目の 2003 年「 Te Deseo Suerte 」。
バンドよりもソロ・ボーカリストとしてのカラーを強く打ち出した時期で、CD にはバラーダやポップスとバイラブレなティンバを半分づつ取り上げるようになりました。 また、アダルベルト・イ・ス・ソンでのコロ時代に回帰するように、ソンを多く取り上げるようになったことも特徴的。
そして 2006 年には、ポップス・アルバム 「 Ilusion 」 を発表。 チャランガ・アバネーラやマイアミに渡ったマノリンもポップス・アルバムを発表していましたが、ついにパウロもといった感じです。
このまま、ティンバを捨ててしまうのかと思われた矢先、本来のサルサ、ティンバ・アルバムに戻ったのが今作 「 Un Poquito de To 」。 ファンとしてはホットしたという感想が正直なところでしょう。
内容は第 3 期の延長線上、ラップやレゲトン、アラブ風味など流行の味付けを施してバラエティに楽しめるようにしていますが、聴き所は以下のナンバー。
1. Un Poquito de To はアップ・テンポのタイトル・ソング。ヒット曲になりました。 レゲトンやラップなど流行を全面的に意識していますが、違和感なく取り入れることに成功しています。
3. Admiradora は、じわじわと盛り上がるパウロならではの曲。
5. Confio en Ti は、じっくり聴かせるナンバー。パウロはバラーダやポップスではなく、サルサのリズムの中でロマンチックなメロディを歌うところに良さがあると再確認できます。 コロが入るあたりからはパウロ独自の世界が展開、最高な 1 曲です。
7. Jura は、キューバン・サルサ・ロマンティカ。踊るには最適です。
9. Fue el は、バラーダ・サルサ。後半はドライブ感溢れる演奏になります。
パウロのキャリアも 20 年に近づき、年齢も 40 代。 イサックもそうですが、そろそろ最新のサウンド追求は若手に任せ、サルサ・ティンバ・クラシックスの音を中心に、良質な歌物の作品をコンスタントにリリースしてくれさえすれば聴き手は充分満足、という存在になってきました。
それは、彼の歌声と作品が他のどのアーティストとも取替えがきかないからです。 今作はそういう意味では安定期に入ったといえる良質な作品と評価できるでしょう。
(福田カズノブ ★ 2006/10/16)
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