フランスで活躍する、キレ者キューバ人 サージェント・ガルシア。
彼の鬼才っぷりは、ここ何年もの間 まるで衰えをみせることなく、いつでも 「こちらが欲する以上の」刺激的な作品を 提供し続けてくれています。
2000年を過ぎた辺りから 「キューバで生産される音楽よりも 国外(それは主にヨーロッパであるのですが)で 活動の岐路を見出したキューバ人が抱えている アイディアのほうがよほど興味深い」 と、私はいつも言っているのですが そのルーツはまさに、彼なのです。
近年は、小手先だけのミクスチャーを 色々と試みるキューバ人も少なくありませんが 彼がすでに「此処に在る」のですから、たいていの ことは、実はやりつくされているのだということが 彼の音楽に接すれば分かるでしょう。
特にキューバ音楽が、ティンバ的な発展を 遂げた、あのグルーヴとレゲエ。 両者をあわせて「ラガマフィン」ならぬ「サルサマフィン」と 称することもあるようですが、サルサというよりは ファンクの要素が濃く 強烈なキューバのビートとラガの融合したものを 彼はもっとも得意としています。 それも ただの融合ではなく、ひときわ新しい音楽として 多角的に提示するところも、力のある音楽家の証です。
本作が彼の作品中、もっともキューバを 強く感じさせるものということになるでしょうか。 どの曲を聴け、とは申しません。 最初から最後まで 彼の壮大な物語のように味わっていただきたい。 途中で、どうしようもなく身体が動いてしまうことはあっても どこかでストップすることなど出来ないくらいの 吸引力に驚きつつ、味わってください(しかし、作品中の どの曲に最も心躍ったかについては、とても意見の分かれるところだと 予想されます。「私にはこの曲がベスト!」などの 個々の意見を聞いて回ってみたい好奇心もあります)。
サージェント・ガルシアの求める音は いつも、派手でくっきりとしています。 ダイナミックで、カラフルな音作りで ジャンルの海をやすやすと渡り、駆け抜けていく。 様々な音楽の要素を抱え込んでいることもあり 実に、豊かなものに感じます。 そんなカテゴライズに何の意味もないと、思われる向きも あるかも知れませんが、例えば 「ワールド・ミュージックの看板選手」といっても いいのではないでしょうか。 私は、あくまでキューバ・ルーツのものとして 聴いてはいますけれど、反対側に立ってみれば また別の解釈もおおいにありうるかと。
それにしても本作品の充実度は並ではありません。 通常のアルバムの2枚分に相当する内容です。
(DJ KAZURU ★ 2006/10/23)
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