Toque Natural 101
Azúcar Negra
2006 EGREM CD-0784
1. Toque Natural
2. El Picaron
3. La Palabra
4. Destino Millonario
5. A Mal Tiempo Buena Cara
6. Lo Prometido es Deuda
7. Ay, Candela
8. Boleto de Ida y Vuelta
9. Estamos Como Estamos
10. El Dum Dum
11. Somos Dos
12. Toque Natural (Version all stars)
13. Mi Unica Vida
14. El Dun Dun (remix)

キューバ音楽もラテン特有のマッチョ指向から外れることなく、長い間、セリア・クルースの在籍していたソノーラ・マタンセーラを除けば、女性ボーカルがメインのバンドは多くは存在していませんでした。

それが、大きく変化したのは 1990 年代後半の Bamboleo の登場から。
スキンヘッドのハイラとバンニアのスタイリッシュさ、そこに、名曲 「 Yo no me Parezco a Nadie 」 が加わったインパクトの大きさは一つの事件でした。

その後、リモンタはハイラを引き連れてアスーカル・ネグラを設立。
リーダーのラサロ・バルデスは、ハイラのかわりにヨルダミスを加えてバンボレオを運営していきます。
同じコンセプトのバンドが 2 つ、まさにのれん分け状態です。
ファンとしては最高のサウンドを 2 倍楽しめるはずなのですが、そうは行かないのが音楽というもの。
リモンタは作曲能力に抜きん出ていますが、凄腕のプレイヤーではないので、アレンジはバンド・メンバーに頼む形になります。
一方のラサロ・バルデスは超絶テクニックのピアニストであり、キューバ国内でも屈指のオリジナリティのあるアレンジャーなのですが、少しテクニックに走るきらいがあって、曲を複雑にしてしまいます。

作曲家のリモンタ、アレンジャー・プレイヤーのラサロ・バルデス、ボーカリストのハイラ、この 3 人にチャコンとバンニアという実力派を加えた黄金期のバンボレオ。
この奇跡的な組み合わせのバンドをリモンタとラサロはいまだに追い続け、ハイラ似のボーカルをメンバーに加えているように見えます。

今回紹介するのはアスーカル・ネグラのサード・アルバム。
ファーストからセカンド作まで4年の期間を要したことからすれば、今回はコンスタントな発表です。

全 14 曲は、安定・充実した内容。
リモンタ・クラスになると自身の最高傑作がキューバ音楽史上の名盤になってしまうので、普通の出来でも他のアーティストに比べるとレベルの高さは段違いです。

ここで、これまでの 3 作をメンバー・アレンジャーから調べてみましょう。

ボーカルに関しては、ハイラをはじめとする 1 作目のメンバーは 2 作目で全員交代、3 作目にかけては 3 人在籍で 2 人が新加入となっています。

ベース担当は、1、2 作目、 Adalberto Domingues、3 作目では、Leonardo Oliva。

ピアノ担当は、1、2 作目、 Aismar Simon、3 作目では、Carlos E Sánchez。

アレンジは、1 作目、ベースの Adalberto Domingues と Julio Quevedo。

2 作目は、ベースの Adalberto Domingues とピアノの Aismar Simon が各楽曲を担当し、作品全体を Joaquín Betancourt がディレクションしました。

そして 3 作目は、ピアノの Carlos E Sánchez が中心になっています。

これらのメンバー・チェンジから、1、2 作目はボーカルが全て違うものの、バック・バンドはほぼ同じ。
2、3 作目はボーカルが同じですが、バックのメンバーに大きな入れ替えがあったと考えられます。

楽曲は全てリモンタが書いているので、全体のトーンは同じですが、3 作それぞれ別バンドといった感じです。

各曲を見てみると、

1. Toque Natural は、キューバ国内でヒットしたタイトル・ソング。健在振りを示すにはヒット・ソングは不可欠です。

3. La Palabra は、コロと込み上げ系のボーカルで展開していくナンバー。この作品の聴き所のひとつでしょう。

4. Destino Millonario は、ポップなキューバン・サルサ。リモンタはこのタイプの曲が書けるのが強みです。

6. Lo Prometido es Deuda は、バラーダ・サルサ。バンバンの「 Corazon 」に通じる曲です。

9. Estamos Como Estamos はこの作品のハイライト曲。リモンタの作曲能力の高さが現れた名曲です。

2006 年現在、キューバ国内の若者向けの音楽が、レゲトンや HIP HOP、ポップスへ移行し勢力を拡大しつつある中、それに対抗してクラーべの入ったポップなキューバ音楽を提供できる数少ない才能の持ち主、リモンタ。

彼の率いるアスーカル・ネグラの 3 作目は、まだまだティンバ、キューバン・サルサは魅力的であることを充分示している快作といえるでしょう。

(福田カズノブ ★ 2006/11/06)

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