前作「evolucion」の流れをそのまま汲む (というわけで♯21もご一読ください) ルイス・エンリケの作品群においては相当 キューバ志向の強い作品。
とは言いましても、前作がアフロ・クーバという バンドに在籍していた、Omar Hernandez が 全権を握っていたのに対して、こちらは クレジットに彼の名は見当たらず 代わりにSergio George が参加、ということになっています。 どう見ても、セルジオが参入してきたなら もう若干、いなたくなるのではないかなーと 疑わしい部分もあるのですが、Omar Hernandez の アイディアを流用した部分もあるかな、といったところ。
いずれにしましても、本作は ルイス・エンリケが最も充実している時期の一枚でしょう。 Salsa の抱える良質のセンティミエントはそのままに サウンドが単調でなく、ビートがはっきりとサルサ以外のものも 伝えていますよと語っている。 こういったものが多くはないこともあり、実に貴重な作品です。 これを「サルサ」と思ってしまえば、難解な部分もあるでしょうが トリッキーな部分も丸ごと受け止めて下されば 予測のつきにくい展開ごと、楽しめるはずです。
ルイス・エンリケは、♯9に収録されている バラードなどを聴いて戴けばわかるように そもそも 歌手としてのテクニックも情緒も抜群ですから、淡々と 「サルサ」歌手をしていても問題なく充分な評価を得たと思います。 ですが その彼が、敢えてキューバ人も裸足で逃げ出すような 複雑な音楽を受け止めて、かつ 自らの声を絡み合わせていってくれたことの幸せがここにあります。 彼は、本当に色々なことが出来る人なのでしょう。
♯4をはじめ、いくつかのトラックは 私のDJでお馴染みかと思いますが、フロアでは 踊りやすいようなリミックスになってしまっていますから、ぜひ より複雑で細かな聴かせ所の多いオリジナルに接してみて欲しいと思います。
(DJ KAZURU ★ 2006/11/13)
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