Para Bailar Son Los Irakere 106
Irakere
1981 EGREM CD-149
1. Dile a Catalina
2. No Soportp Ni Una Mentira Mas
3. Ese Atrevimiento
4. No Quiero Confusion
5. Te Quiero Tanto Muñequita
6. Tres Dias

ティンバというスタイルの音楽は一体いつ頃、誰によって演奏され始めたのか。
この命題には諸説がありそうですが、作品になったものを対象にすると、今から 25 年前、1981 年発表のこの作品が最源流なのではと思います。

1973 年に、オルケスタ・クバーナ・デ・ムシカ・モデルナを母体に結成された Irakere。

チューチョ・バルデスをリーダーに、パキート・デ・リベーラ、アルトゥーロ・サンドバル、オスカル・バルデスらを擁して、キューバン・ジャズの凄まじさをグラミー賞受賞で世界に知らしめましたが、1980 年には、パキートとアルトゥーロが USA に亡命してしまいます。

そして、その後に加入したのがヘルマン・ベラスコと Los Van Van に在籍していたホセ・ルイス・コルテス。
彼らが加入してから第1作目となるのがこの作品 「 Para Bailar Son Los Irakere 」 なのです。

Los Van Van はバンド・サウンド中心主義なので、ホセ・ルイスが自ら持っていたサウンド・アイデアを実験する機会がありませんでしたが、
チューチョ・バルデス率いるIrakere は、その点自由。
リズムから演奏方法まで、ミュージシャンとして面白ければなんでも採用できる環境にありました。

4. No Quiero Confusion は、ホセ・ルイス・コルテス作曲、アレンジのナンバー。
リズム表記は Son になっていますが、ジャズでもないソンでもない、まさにティンバに繋がる混沌としたアイデアがそのまま音になった曲です。
歌詞の中で、Salsa とSon のことを取り上げていて、ホセ・ルイスがこの当時からNYで生まれた Salsa を強く意識していることが伺えます。

2. No Soportp Ni Una Mentira Mas は、後にホセ・ルイスの盟友となるヘルマン・ベラスコ作のボレロ。
モダンなアレンジは、彼の才能が只者ではないことを現しています。

そして、このアルバムの最大の聴き所は 6. Tres Dias。

チューチョ・バルデスは、ホセ・ルイス、ヘルマン・ベラスコを得て、Son のモダン化をルンババーナや Son 14 とは違った方法論で解釈したのでしょう。

この曲は、リズムに Son の基調が強く残っていますが、ホーンアレンジや全体のトーンはティンバそのもの。
哀愁ある美しく力強いメロディ、ダイナミックな展開、チューチョ・バルデスの才能が結晶となった作品です。

彼は、この1曲でその後キューバ音楽界を席巻するティンバ全てを、はるか 10 年近く前に表現してしまったのでしょう。
まだ、NG La Banda が登場する 6 年も前のこと。ホセ・ルイスやヘルマン・ベラスコは、チューチョ・バルデスが完成させた楽曲を、独自の方法で自ら確立するために試行錯誤を続けます。

実はこの 6. Tres Dias は、1997 年発表のIrakere が放ったティンバ・アルバム 「 Babalú Ayé 」 ( Disc Review 28 参照 ) でも演奏されているのです。
まさに、この曲がティンバだったことを証明しているかの様です。

手に入りにくい CD ですが、ティンバの歴史をさかのぼる時には決して外せない重要作です。

(福田カズノブ ★ 2006/12/12)

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