キッド・クレオール ( ことオーガスト・ダーネル ) の トロピカルな妄想がいっぱい。
kid creole & the COCONUTS 名義のものよりも 女性 3 名を看板に打ち出した、本作のほうが 更に派手になっております。
Salsa にしかご興味のない向きは、以下全文を お読みいただく必要が御座いませんが ココナッツのトロピカル+ファンク+ポップな世界観を 体験しないのは勿体無いことです。
中心人物であるキッド・クレオールは 作詞・作曲もすれば、強いコンセプトの バンドカラーを創り上げる才能もあり、魅せることを 何よりよく知っている人物。 俗悪さをも恐れずに、肩の力を抜いて耳を楽しませる ものを提供していながら、実は真摯に音楽を見据えている なかなかのキレ者といえましょう。 全体の音作りは サルソウルが好きな方には非常によくわかる 感覚だと思われますが、ミクスチャーな手法という点については 現代キューバ音楽のそれをも彷彿とさせます。
大所帯で、一口には現せないような ポップ・ミュージックを、真剣に遊んでしまっている。 そこが我々日本人には 「 米々クラブ 」 と同様の印象を もたらすはずです。 更にキューバ音楽を愛好するあなたであれば 2000 年あたりから、急激に人気を博してきた アルナルド・タリスマン率いる 「 アスーカル 」 が やはり、複数の女性を矢面に立たせており 「 あれは、キッド・クレオールの踏襲型だな 」 と思われるでしょう。
スカ・カリプソ・R&B・ラガ・ファンク。。。その辺りを中心に 生楽器の分厚い音で表現。 ステージングのビジュアル面も充実を図る。 キッド・クレオールの才能の幅広さ、巧みさに巻き込まれるのは とても心地の良いものです。
そして、私が 彼に惹かれるのは、その独特の哲学に 共感するからでもあります。
佐藤英輔氏が 80 年代、キッド・クレオールが来日した際 インタビューを行っており、その発言がまた素晴らしく 彼の哲学を端的に示しておりますので、それを 引用させていただくこととしましょう。
・・・( キッドの長年の活動について、時代の波長が 徐々に追いついてきているのではないか、と 言われたことを受けて ) 「 いや、メインストリームにいるというのは 嫌うべきことだ。もし 時代が私たちに追いついてきているのなら、私たちは 全力で逃げるようにしたい。 主流なんてくそくらえ、次の時代だって、私達は 非主流のところを走っていきたい。私たちは ずっとパイオニアでいたいのさ 」
*なお、本作品のレコード番号は、1991 年に 日本コロムビアより CD 化された時のものを採用しております。
(DJ KAZURU ★ 2006/12/20)
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