キューバ音楽を初めて聴く人に入門編として何か推薦して欲しいと言われた場合、Maraca はお勧めできる最適なアーティストの1人でしょう。
その理由は、Latin Jazz をベースに、Son、Danson、Cha Cha Cha、そして Timbaまでキューバの様々なリズムを取り上げて紹介しながら、 高度なテクニックに裏打ちされたキレの良い演奏も同時に楽しめるからです。
Orland Valle Maraca は、ミュージシャン一家バジェ五兄弟の四番目として生まれました。 三男のユムリは Orquesta Revé のカンタンテを経て、兄弟達とバンド Yumurí y sus Hermanos を結成。現在ではキューバを代表する堂々たる中堅歌手です。 長男のペドロと五男のルイスはエルマノスのバンド・メンバーとして来日し、そのまま日本を拠点に活躍中なのはご存知の通り。
マラカのキャリアは、1989 年に NG La Banda 結成の為脱退したフルート奏者 José Luis Corté s の後釜として、Irakere に加入したところから始まります。
その後、1994 年には、兄弟のバンド Yumurí y sus Hermanos に参加。 1996 年には自身のバンド Otra Visió n を結成し、 1996 年 「 FORMULA UNO 」、1996 年 「 HAVANA CALLING 」、1998 年 「 ¡SONANDO! 」、2000 年 「 ¡DESCARGA TOTAL! 」、2002 年 「 TREMENDA RUMBA! 」、2005 年 「 SOY YO 」 の計 6 枚のアルバムを発表しています。
今回取り上げたのは、1998 年から 2002 年までの 3 枚から、バイラブレ系な曲をピックアップしたベスト盤。
1998 年 「 ¡SONANDO! 」からは、5、7、9 2000 年 「 ¡DESCARGA TOTAL! 」からは、1、3、4、10 2002 年 「 TREMENDA RUMBA! 」からは、2、6、8、11、13
まさにマラカの魅力が凝縮された 1 枚になっています。各曲を見ていくと。
1. は、ラップを取り入れたピロンというリズムの曲。Pacho Aronso が始めてですが、現在はPachito Alonso のオルケスタが得意としています。
2. は、ラガとサルサをドッキングさせた曲。マラカ・バンドの重量感のあるファンキーな演奏が冴えまくります。
3. は、ソンをベースにしたデスカルガ・ナンバー。
4. グアヒーラ。古くからの農村での大衆歌で、キューバ臭くいい感じです。
5. イラケレ流の疾走間溢れる演奏が炸裂するラテン・ジャズ。マラカのフルートも聴き所。
6. 1990 年代前半のキューバン・サルサを現代的な解釈で演奏しています。
7. ユムリがボーカルで参加したコンテンポラリー・ソン。
8. マラカ流ティンバ。人気のあるナンバーです。
9. ピオ・レイバ、ローロ・マルチネスのボーカルが聴けるチャチャチャ。
10. この曲もソンとジャズの融合でしょう。
11. コンテンポラリー・ソンのナンバー。
12. と13.はフランスでのライブ録音。
大きくとらえると、キューバのジャズ・プレイヤーがサルサを演奏したものがティンバならば、マラカ・バンドはキューバのジャズ・プレイヤーがソンをはじめとするトラディショナル・キューバンを演奏したものといえるでしょう。
キューバの音楽が様々なものを吸収しながら変化・進化していく中で、どうしても古いものとして忘れ去られがちなキューバ音楽の本流を継承し、現代的なアレンジを施し海外を中心に演奏活動を続けているマラカは、貴重な存在といわねばなりません。
ユムリ時代を含め、過去に 2 回の来日をはたしているマラカ。他のジャンルを聴いている耳の良い聴衆に対して、キューバ音楽を理解してもらうには Los Van Van や Charanga Habanera より前に一聴をお勧めしたいアーティストなのです。
(福田カズノブ ★ 2007/02/06)
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