発売当時は良く聴いていたけれど、その後、棚から出して聴く機会がすっかりなくなってしまっていたアーティストの1人 Valentín。
何年かぶりのサウンドは、古き良き時代の音そのもので新鮮ですらありました。
バレンティンは、全盛期のオルケスタ・レベ、アダルベルト・アルバレスのカンタンテを務めたトップ・ボーカリストとして 1994 年に 「 Gente Barrio 」 を発表しソロ・デビュー。1997 年にこの作品 「 Volvamos a querer 」 を発表しましたが、以後すっかり音沙汰がなくなってしまったのです。
レベやアダルベルトの曲で、その特徴ある男っぽいミドル・テナーをよく聴いていたのが懐かしさの原因ですが、そのサウンドはただ単にボーカルのバックを超えたものがありました。
ベース・ラインが、メロディを弾いているように変化するスタイルは、当時のサウンドを牽引していたNG La Banda の影響。ホーン・セクションもジャズの影響がみえます。ソンやチャングイを歌ってきたバレンティンのボーカルは、どちらかといえば渋いスタイルですが、バックのサルサ・ドゥーラと呼ばれていた頃の演奏と以外にもマッチしています。
2007 年現在の音からするとのんびりとした曲調に、1997 年当時のハバナの街並みを重ね合わせる人もいることでしょう。 キューバン・サルサがティンバと改名して破竹の快進撃を遂げる直前の良質なサウンドがこの作品には詰まっています。
ラムを飲みながら、たまに踊ってというという楽しみ方をするときには最良なのが1曲目。プロデューサーのダゴベルト・ゴンザレスのセンスが光っている6曲目はベスト・テイクです。
話題にのぼることの少ないこの作品、隠れた名盤の1つとして紹介しておきます。
(福田カズノブ ★ 2007/02/21)
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