非ラテンものを堂々とこの場で取り上げることへの 若干の抵抗感はあるのですが、私が ラテン音楽において重視しているものは何か、ということを 示すためにもリロイ・ハトスンは、いちど紹介しておきたかったのです。
ライナー・ノーツから略歴を抜粋させていただきますと リロイは1945ニュージャージー生まれ。 ワシントンDCのハワード大にて音楽を専攻(同期は、かの ダニー・ハサウェイ)。 ソウルの偉大なグループであるインプレッションズのリード・シンガーとして カーティス・メイフィールドの後釜となる。 1973年、ソロとして独立。作詞・作曲、ピアノ、歌とマルチな才能を開花 ということですが、それはとりあえず どうでも宜しいのです。 この一枚を耳にすれば充分なのですから。
まず、度肝を抜くのは♯1。 期待感たっぷりのドラムでつかみはOK。 セクシーなボーカルに絡むのはグルーヴするベース。 いやがおうにも高まるムードを醸し出すストリングス。 更には ブラスが入ってきたときの興奮倍増ぶりといったら 眩暈がしそうなくらいです。
ソウルの歌物としては7分の大作ですが、 カットすべき無駄な音など何処にもなく、この一曲が まるでドラマのよう。
さて、これを聴いて頂いても ’私がラテン音楽で重要視すること’といっこうに 結びつかないと感じた方もいるかもしれません。 なにせソウル・ナンバーですから。 しかし私にとってはこれが同じことなのです。 このように都会的でセクシュアルでセンシュアルな 世界の構築を目指しています。 道具が異なったというだけ。と申し上げればいいかどうか。
♯2以降も「腰砕け名曲」のオン・パレードとなりますが ♯5は少し音楽を色々と聴いてきたことを自認なさる方なら 一度くらいは耳にしたことがあるでしょう。 その昔、私は夜も明けようという時間帯のシメの一曲として これを頻繁に選択しましたが、一瞬にしてセンスのよい人に なれてしまったものです。 DJとしたら相当安い手ですが、そういった吸引力のある曲を 生み出したリロイの才能はやはり明らか。
今回記載したCD盤は、1994年に復刻されたものですが そのほかにも復刻アナログ盤や、CDの廉価盤など 現在は色々な体裁にて、販売されている作品です。 誰もが知っているようなソウル・シンガーではありませんが スター性にほんの少しばかり欠けていたとしても 彼の普遍的なクールさは偉大です。 私は、初めて聴いた時のショックから 今も抜け出せずに酔い続けています。
(DJ KAZURU ★ 2007/02/26)
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