2007 年に行われたLos Van Van 久々のキューバ国内縦断ツアーの中から Camaguey でのライブをそのままパックした作品です。
圧巻なのは 1 曲目の 24 分にも及ぶメドレー。 音が波のように押し寄せては引き、重なり合うように更に押し寄せてくる演奏です。 2006 年から 2 年連続で行われたジャパン・ツアーもすばらしかったのですが、キューバ本国のそれもあまり行われることの少ないカマグエイでのライブは、Los Van Van 側も気合の入れようは尋常ではなかったと思いますし、オーディエンスもフォルメル健在のバンバンを見届けたいという雰囲気があったのでしょう。 双方のエネルギーがかたまりになって音楽になったような凄さが感じられます。
以前ディスク・レビューで取り上げた Los Van Van のマイアミ・ライブは、ぺドロ・カルボ、プーピ在籍時の傑作ですが、この作品は当時とは別のバンドとしての傑作ライブと位置づけられます。
当時のメンバーはそれぞれリーダー・バンドを従えて独立しましたが、現メンバーの人気とミュージシャンとしてのレベルも相当なもの。 フロントではロベルトン、マジート、そしてジェニーの3人はよいディレクターがいれば看板歌手として独立できる名ボーカリストですし、トロンボーンのフーゴ、シンセのボリス・ルナ、そして事実上バンバンの次期リーダー、サムエル・フォルメルなどもリーダー・バンドを持てる実力者です。
御大ファン・フォルメルの元、そんな才能が結集し、一つの音を創っているのが Los Van Van の最大の強みといえるでしょう。
24 分間のノンストップ・ナンバーを聴くとその体力に唖然としますが、キューバ人相手に演奏する場合このテンションの演奏が延々と何時間も続くことは珍しいことではないのです。 その秘密は力を抜いて音楽に身を委ねて演奏し、そして聴いているからでしょう。 外国人ではこのような演奏や聴き方ができないので途中で疲れてしまうのです。
頭の中が真っ白になって、自然と腰が動いてきて、えも言われぬ快感と興奮、そしてゆったりとした安堵感を感じるようになればあなたもキューバ音楽の扉を開いた証拠。 さらに粒になって聴こえてくる音が、ヅーンというひとかたまりの大きなうねりとなって体を通過するようになれば、あなたはその音の虜となってしまうことでしょう。
この Los Van Van の作品には生のライブの中でしか感じられないキューバ音楽の秘密が冷凍パックされています。
ぜひ、大きな音で自然解凍して楽しんでいただきたい1枚です。
(福田カズノブ ★ 2007/03/07)
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