2006 年スウェーデンから突如現れたティンバ・バンド Calle Real。
そのデビュー作に詰め込まれていた今までに聴いたことのない質感のサウンドに、当時、久しく感じていなかった興奮を覚えました。
2002 年以降、停滞期が続いている本国キューバのティンバ・シーンですが、海外から独自に一歩先を行くサウンドが打ち出されたことは、意外な出来事といえます。
このバンド、発売直後には日本のキューバ音楽ファンの間でも話題になりましたが、そのサウンドのどこが新しく、どこにキューバ音楽ファンの心を掴む点があるのか、少し分析してみたいと思います。
まず、印象的なのはピアノ。奏法はティンバですが、そのコード・ワークにはキューバにはない他国のものを感じさせます。 ベースも音数が少なくシンプルですが、ピアノ同様モダンな感じがします。
一方、パーカッションは一定のリズム・キープとキメ部分に徹していますが、これが返ってサウンド全体の疾走間を高めることに成功しているのです。 ボーカルはキューバン・ティンバ色が濃く、文句の付け所が見当たりません。本国と比べた時、他国のキューバ系のバンドではボーカルが弱点になるのですが、Calle Real の場合は強力で、バックのコロもティンバのタイミングをしっかりと押さえています。
メロディ・ラインがキューバ風ではないのにリズムやボーカルのタイミングはティンバそのもの、そこが新しく新鮮でキューバ音楽ファンの心を掴んだ要素といえるのです。
ティンバというキューバの音楽をそのまま物まねする段階を越え、他の要素をティンバ・サウンドに融合させることに成功したバンド、Calle Real はそう評価できるでしょう。
勿論、ロス・バン・バンやマノリート、チャランガ・アバネーラのようなルンバやソンなどからくる深いビート感はCalle Realから感じることはできませんが、それらは本国のバンドがしっかりと守っていくべき真髄なので望む必要はありません。
あるジャンルの音楽が指示され続けるには、常に新しく進化することが絶対条件。このポピュラー・ミュージックの宿命に対し、他国のティンバ・バンド Calle Real が成し遂げた新たな一歩に、拍手を送りたいと思うのです。
この作品、まだお聴きでないティンバ・ファンにはぜひ一聴をお勧めします。 そして、日本のティンバ・バンドにはこのコンセプトが大いに参考になるのではないかと思っているのです。
(福田カズノブ ★ 2007/06/25)
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