歴史的認識はさておき、私個人の感想としては この作品と共に「ティンバの素」なる概念が日本に持ち込まれた 印象が濃いのです。 そして、そのことは、チャランガ・アバネラが1996年にリリースした 「PA' QUE SE ENTERE LA HABANA」で はっきりしたと。
当時日本で耳にすることの出来た 「キューバの現在的なる音楽」はNGラ・バンダとその周辺が 核でありまして、彼らがテクニカルな面をより強調した グループで、音楽マニアの心を捉えていたとするなら チャランガ・アバネラはポップ路線そのもの。 この差はとても大きかった。
あくまで分かり易く、ポップ・ミュージックとして存在した チャランガの音楽は、我々日本人にも 「これは今までのキューバ音楽と異なるし、欧米的な ポピュラー・ミュージックとも違う」 ことを突きつけてきました。
勿論2007年現在、これを聴けば 笑ってしまうくらいに「成長する前のダヴィ・カルサード・バンド」です。 が、紛れもなくリーダー、ダヴィの夢に描いたであろうコンセプトは ここに込められてもいるのです。
キューバの音楽家として誇りを持ちながらも モナコ公演に行った際、アメリカのポピュラー音楽家達の ステージを目の当たりにして自らの「遅れ」を悟り 焦りを隠さなかったダヴィ。 世界に恥じない音楽集団を作りたいと願った、その 気持ちが何かしらの形を成したのがこのアルバムです。
音楽的才能だけでは世界標準の迫力に対抗することが出来ないからと 改善したヴィジュアルやダンスは、それこそ欧米的なものに 慣れきった目でジャッジすれば 「まだまだね、幼い」 そんな程度のものだったかもしれません。 それでも賢き独裁者は「チャランガ・アバネラ」の 改良を重ねに重ね、ここから数年後には 誰もが認めざるを得ない、音楽とパフォーマンスで 聴衆を圧倒する存在にしてしまいました。
チャランガ・アバネラの原点というと 他の作品を挙げる方もあるでしょうが、本作品が ある方向性の始まりであったことを強烈に伝えるものであることに 異論はないのでは。 ♯3、♯11、今も名曲の輝きを放つ曲(どちらもクリマックスの リーダー、ヒラルド・ピロートの作品です)が多数あります。
当時擦り切れるほど(CDですので、読み込みがなされなくなるほど。 お気に入りのトラックほど聴けなくなってしまう哀しい現象です) 聴いたものです。 あの頃に、「サルサ・ドゥーラ」を愛した人であるならば 誰もが同じ経験を持つでしょう。 皆様お手持ちの、この盤はボロボロに違いありません。
未聴の方へ。御多分に漏れず、様々な ジャケット、レコード番号のものが出ておりますので いずれかをお買い求めください。
(DJ KAZURU ★ 2007/07/23)
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