1999 年に上映されたフランス映画 「 サルサ 」 は、タイトルこそサルサとなっていますが、キューバ音楽を題材にしています。
物語は、フランス人クラシック・ピアニストがキューバ音楽に出会い衝撃を受けて感化されていく中で、同時に美しい女性にも魅了されていくという進行。 コンテンポラリー・ソンの重鎮シエラ・マエストラのメンバーがパリのクラブで箱バンをしているという設定で、自然な演技をしているところも見所です。 外国人がキューバ音楽に出会い、恋愛にも似た感情を持って盲目的にのめり込んでいく様を、音楽と女性に重ね合わせいくところは、滑稽さもありながら、まさにキューバ音楽やダンスを好きになってきた自分達の投影のようで、ぐっとくるものがあります。 最後は、ハバナに降り立ちその喜びを爆発させるストーリーは必見。異国から見たキューバ音楽が素直に表現されている点で良く出来ている映画です。
そして、そのサウンド・トラックが本作。 1 曲目のタイトル・ソング、5 曲目のイシドロ・インファンテの快演は共にキューバ音楽ではなく Salsa ですが、一聴に値する曲。そして何といっても素晴らしいのはエンディング・シーンを飾るシエラ・マエストラの 「 Mi música es tu música 」 です。
トラディショナル・ソンの研究をしていた学生バンドからスタートし、1980 年代初頭に起こったソンの復興の立役者となったシエラ・マエストラですが、現在はオリジナル・メンバーのヘスース・アレマニーがクバニスモを、ファン・デ・マルコスがアフロ・キューバン・オールスターズを率いて活躍している一方、バンドの顔ともいえるリード・ボーカルのホセ・アントニオ・ロドリゲスが惜しくも若くして急死したこともあってやや失速を余儀なくされています。 1990 年代には重厚なソン・アルバムを立て続けに発表し、海外でも高く評価されていたのに残念な昨今です。
今回紹介したサウンド・トラックの1 曲は彼らのポップ・ソングとしての最大のヒット曲。 この作品の後、久しぶりに来日したシエラ・マエストラは素晴らしいライブを披露して、日本での人気も急上昇していたことを思い出します。
今回のディスク・レビューは映画もサウンド・トラック CD もお勧めという趣向。 音楽と映像が相思相愛で結びついた作品といえます。
(福田カズノブ ★ 2007/07/31)
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