2002年といえば、世界中のキューバ音楽ファン、とりわけ 「ティンバ・マニア」の間で 「もうティンバ時代の終焉なのではないか」ですとか 「だとしたらこれから何を聴いて生きていけば良いのか」 などの切実な問題が囁かれて、もう どうにもならなくなった(かのように見えた)頃だと思われますが 最後の救世主的に台頭してきたのがチスパでしょう。
ティンバというものがあらかた認識された次のシーズンに登場したという意味で 私は彼らをティンバ第2世代と位置づけておりますが、結局 ティンバはなくなるどころか、形を変え国境を越え 幾つものチューブに分かれ、それぞれに発展した事実を踏まえた現在の目で このバンドを睨んでみれば思いも新たになろうというものです。
ティンバ第2世代の雄であったチスパも冷静に聞いてみれば 音を詰め込むべき部分がスカスカだったり(或いは余計なことをしてしまっていたり) ティンバの型を踏襲したに過ぎない部分も多々見られ 何方にも推薦できる一枚というには足りないものも目に付きます。 しかしです。 衝動的に彼らを突き動かしていると思われるような物凄いパワーが あることはこれ、間違いが無く。 そのことの前では、お洒落感を出そうとして、頑張った装飾が 裏目に出ているなんていうのはご愛嬌 彼らが欧米的音楽ビジネスの洗礼を受けていないことの証ではありませんか。 音楽ビジネスのあらゆる方面を見聞して来た人には 何だ是は、一体。 と思わせる 迫力、生々しさ、美しいビートが厳然としてここには在り 故に私共は腰を動かして陶酔するしかない。 理由付けの非常に難しい感覚です、それを生み出すことに 彼らは成功しています。
名盤の呼び声も高いファースト・アルバムとの比較となりますと 明らかにこちらのほうが捏ね繰り回されてはいるのですが どちらもそれぞれに音楽への高まりを感じさせる好盤といえましょう、なお 本作品を効率よく楽しむにはCD-Jを一台購入し きちんとマスター・テンポを施した後に、テンポを程よくアップして戴くことです。 チスパというのは実に鋭い疾走感を抱えて演奏している、そういった部分でも 高感度の高いグループなのですが 実際、耳に入ってくるテンポはそれに見合っていないということが多すぎます。
内包されているテンポ感覚と実演奏の乖離については チスパに限った問題ではないのですが、これもプロデューサー不在のキューバ問題と 関わることだと個人的には感じております。 勿論 そんなのはあなたの好みの問題でしょう、ミュージシャンが提示した テンポが総てなのだ、と仰る向きにはそのままの再生を否定するものではありません(が、 私などは通常再生の場合であっても脳内変換が自動的に行われてしまいます)。 どちらに転んでも、音楽の力が「其処にある」ことに変わりは御座いません。
(DJ KAZURU ★ 2007/12/09)
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