キューバ音楽の魅力、その多くを備えたものがソンでした。 哀愁あるメロディ、エッジの利いたリズム、その両方が溶け合って世界中どこにもない独特な音楽を形成し、キューバの基幹音楽として発展していたのです。
ところが長い年月が経って現在では、ティンバやジャズにその地位をあけわたし、さらに若者の人気はレゲトンやポップスへと移り変わってきています。 かつてキューバで一世を風靡したソンは、今やトラディショナルなものとして落ち着き、どちらかといえば田舎や昔を感じさせるジャンルなってしまいました。
田舎臭くなく、都会的でモダンなソン、近年のホーベネス・クラシコス・デル・ソンの登場はまさに現代なソンとしての復活だったのですが、メンバーの脱退で失速してしまったようです。
ホーベネスのようなモダンで都会的なソン。そんな音を求めている人はいませんか。 今回紹介するニーニョ・リベーラの作品は、まさにそんなモダン・ソンの原点が聴ける数少ない 1 枚。 初めて聴いたときはこんなにかっこよいソンがあったのかと、驚いたものです。はるか以前のバンドなのに、最近のティンバよりスタイリシュで都会的ともいえる音なのです。
この作品のリーダー、ニーニョ・リベーラは、キューバ特有の 3 弦ギター、トレス奏者。ソン発祥の頃は花形楽器でしたが、現在はピアノに取って代わられトレスが入っているバンドは数少なくなってしまいました。 歴代の名手はキューバ音楽の巨星アルセニオ・ロドリゲスに始まり、現在では、パピ・オビエド、パンチョ・アマート、コトーなどがあげられますが、ニーニョ・リベーラはアルセニオと現在をつなぐ重要アーティストといえる存在なのです。
トレスは、ギターとベースを合わせ、ギロなどパーカッションの効果も持った独特な音色が特徴です。アルセニオがごりごりしたトレス音なのに比べ、ニーニョ・リベーラは甘酸っぱさのある音色が特徴。素晴らしいメロディ・ラインの自作曲は多くのアーティストにもカバーもされています。
バンド・メンバーには、ボーカルにミゲリート・クニー、ピアノにルベン・ゴンザレスも参加。
歴代ベストのソンを 10 枚選べといわれれば、その1枚に確実にエントリーする傑作。永遠に輝きを失わないであろう珠玉の作品です。
(福田カズノブ ★ 2008/01/23)
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