ゴンサロ・ルバルカバやアルトゥール・サンドヴァルに代表される ラテンジャズ系とフスト・ベタンコーやロベルト・ロエーナら、サルサの精鋭が会した まさにV.I.P.な企画物。
これを単なる寄せ集め物と思ったら大間違いでありまして、アクの強い ミュージシャン勢の個性を生かしつつ、見定めた音楽的到達点へ 一丸となって向かう芯を感じさせる一大ラテン・プロジェクトになっております。 ともすれば纏まりに欠ける、看板ばかりが派手なプロジェクトになってもおかしくない そんな人選(つまりは大物という意味ですが)ながら、エレガントかつ 攻撃的な魅力に満ち満ちた作品に仕上がっております。 マルチ・プロデューサーである ルイス・マルケスの技量と、寄せられる信頼は類のないものといえましょう。 何と言う力強さ。彼のルーツであるキューバ音楽の 未来も過去も内包したような濃密さが圧倒もの。
キューバ音楽も伝統的を重んじて古き良さを前面にしたものから 若い世代の他国への憧れを隠さないものまで 「ミクスチャー音楽である」ことを根底としながらも、それぞれに 発展、分派してきている昨今、一体 キューバ音楽を信奉する人々は(音楽家たちは)何を手に入れんともがくのでしょう。 それについての意見は多々あるでしょうが、ソンが強かろうと ファンキーなテイストが強かろうと、揺れ動かない テクニックと伝統に守られたキューバ音楽は 常に、構築の美を保ちながら進み続け、当然としてそれは ダンサブルである、と。 そんな キューバ音楽にとっては当たり前のようなことを バーンと見せたような部分をもつ、素晴らしき企画物です。 プロデューサーの心意気なのでしょう。 彼の手腕は絶品で、テクニカルな面も評価の対象ではありますが キューバ音楽が好きで仕方ないという 愛情が無ければ生まれなかった作品であると感じます。
そして、この作品くらい土臭さを排除した(と、表現すると 土臭いのがキューバ音楽のよさではないか、という 声も上がりそうですが、けして薄まっているという意味では ありません。むしろ濃密です)アレンジと演奏にしてあれば、普段 キューバ音楽から遠い方々の耳にも馴染むものがあると思われます。 それを戦略として行ったのであれば、素晴らしいし いや、俺はこういうテイストが只好きなだけなのさ、とプロデューサー氏が 言うのであれば、今後更なる期待が持てるというものです。 すでにGuaco‘Galopando’やCABIJAZZ‘Suena a salsa con jazz ’などシーンに 一石を投じるような作品に関わってきた(枚挙にいとまなく、かつ ひとつひとつが濃密な作品なので、これ以上はやめておきますが、私の 気になる作品の影にこの人あり、という位センスの良い仕事ぶり)人なので、この先 我々を驚かせてくれる可能性はむしろ高いと思われます。
リード・ボーカリスト、ソリストが各曲明記されております。 おお、この人のソロは矢張りいいな、とか何とか ミュージシャン一人ひとり、テクニックの確認をしつつ楽しまれてくださいませ。 いやー、これは格好いい演奏だな、と思って クレジットを確認すれば必ず耳にした事はあるような名前が 書かれていることでしょうが、高い 評価を受けているミュージシャンだけありまして、どうすれば ハイライトを演出できるかということを理解しています。 さすが、という場面は多々。 個々のソロ・アルバムを聴いてみたい、という気持ちを誘発する 作品でもあります。
(DJ KAZURU ★ 2008/04/17)
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