今年は谷崎潤一郎没後
五十年なのね。
「春琴抄」や「細雪」は
もちろん大好き。
ですが、読んだことない作品も
沢山ありまして
「お艶殺し」もそのひとつでした。
奉公人が店の娘と
駆け落ちする話。
その過程で
色と欲がからみあっていきます。
娘のほうが積極的で
さあ、連れて逃げてくれ
今日か、明日か、
と
男をそそのかすのですが
手に手を取って
逃げていくとき、そのときこそが
最高に、この女の輝くときなのです。
何か問題が生じて
此処ではないどこかへ
逃げていく。その
道行の美しさね。
道行の美、といえば
文楽ですが
まるで
人形浄瑠璃を見ているような
小説でした。
血が何度か流されるのも
お定まり。
様式美のような。
・・・
同時収録されている
「金色の死」
は、優秀な若者が
なぜか肉体を鍛えることに
ハマる話で
三島由紀夫みたい・・・と
思ったら
やはり三島由紀夫が大きく
評価した作品だそうです。
谷崎自身は
この作品、書いたものの
自選全集からも外したほど
気にくわないものだったとか。
それを三島がばんばん
宣伝してしまった、という
経緯があるらしい。
気に入らない作品が
多くの人の目に触れるのは
嫌なことだったと思いますが
文豪って、学生時代の
下らん走り書きまで
文学系の博物館で
展示されちゃったりするから
其の点は本当に
お気の毒なことです。
(DJ KAZURU)
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