林真理子著
「本を読む女」 拝読。
文章の才能があると
幼少のころから認められながらも
女性に学問が当然ではなかった時代や
都会ではない土地という環境、また
戦時下のあれこれで
「作家にはなれなかった」
女性のものがたり。
これって
林真理子のお母様の
実話に基づいた
小説だそうです。
主人公は
どんな苦境にあっても
本を読むことの
楽しさを忘れず
それをたのみに不本意な
生活でも受け入れていくのですが
これに比べると
なんて今はいい時代なんだ、と
素直に思います。
家族の意向で結婚させられることもないし。
学びたければ
自由にその学問に没頭できるし。
本の世界に枯渇することのない
時代を生きていても
「飢え」の感覚を作者は
身近に知っていたのだよね、そういうことも
林氏の作品のあれやこれやに
反映されているような気がします。
人はどうして
少女のまま生きていけないのだろう。
人はどうして大人になり
つらい苦役を背負わされるのだろう。
ラストシーンで
主人公は
「これほどまでに魂に
迫ってきた本があるだろうか」
と、自分の半生に重ねて
太宰治の斜陽を読むシーンがありますが
この部分は、もう
なにもかもが燃え盛るようで
たまらない気持になりました。
人生において
ひとつの小説がどれほど力をもつのか、を
素晴らしく示したシーンに感激。
(DJ KAZURU)
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