牧美也子さんて
大好きな漫画家なんだけど
こんなのも描いている。

「好色五人女」なんていうと
エロ満点みたいな誤解もあるようですが
たぶん「好色」の意味合いが江戸期と
現在では異なるのでしょう。

帯にセンター対策にも！　とか
受験生必携！　とあるのが笑えるけど
井原西鶴の世界って
牧美也子さんの絵柄にぴったりな
気がいたします。

さいきん
文楽を見に行ったので、ふと
思い立って読み返してみましたが
原作も絵も素晴らしい。

あとがきには
「現代には起きるはずのない悲劇」
と、記されているけれど
お金の問題、家の問題、
犯罪をおかしてしまった、
結婚しているけど他の人を好きになった・・・
などなど
それが理由で世間に堂々と顔向けできない
男女の問題というのは
現代でもあちこち見かけます。

そんな現世ではどうにもならない問題を
一気に解決、世間をも納得させるのが
人形浄瑠璃にはありまして
それが「道行、心中」です。

道行に至れば
「犯罪者！」「泥棒猫！」「恩知らず！」など
どんなに文句を言っていた人たちも
黙ってくれます。なぜなら
命を賭した決意を目の当たりにするわけだから。
自分たちが楽しみたいだけの
身勝手だけじゃなかったんだな、と思ってくれます。

わたくしは
何も人形だけにおまかせしなくとも
現世で処理しきれない問題を抱えても、なお
それが本気の恋愛であるというなら
道行GO! がいいと思います。

現実に道行・心中コースをたどる人は
とても少ないものですが
かの三島由紀夫も
道行しているとき、人形は
ぐっと大きく存在感を増す、というようなことを
書いています。

すべてを棄てて
道行となれば、世間も納得するものなので
現代の困ったちゃんたちにも
道行はなかなかいいものみたいだよ、と
言ってあげたい。
まあ、問題は
ひとりでは出来ないというところですが
命と引き換えでも成就させたい恋があるなんて
羨ましいくらいです。

打算のない愛の顛末を
みんな見たいのよ。

(DJ KAZURU)