皆川博子著
「花闇」拝読。
もー、ずっと読みたかった
大好きな作家による
江戸末期の歌舞伎役者の話です。
文庫復刊してました
ありがたや、ありがたや。
主人公の澤村田之助は
実際の人物でして
なんと両足を壊疽で切断。
その後も舞台に立った
女方。
江戸時代に足の切断手術を
しているだけでも驚きますが
その後、手も同じ症状に襲われ
片手首から先と
もう片手は小指を残して切断したそうです。
それでも
舞台に立ったってどういうこと?
と思っていたのですが
これを読むと
彼の本来の役者としての
資質の高さと
周囲の工夫でそれを可能にしていたことが
わかります。
また
田之助というひとは
いまでいうエログロ的な
例えば血みどろで殺し合うような
陰惨な出し物を得意としていたということ。
これも
江戸時代と現代の歌舞伎の印象で
異なるところですが
当時人間の嫌な部分を
これでもかー、と演出していた
歌舞伎は
徳川の時代が終わり、江戸が
東京になった途端に
終わるしかなかったのですね。
近代化を焦る政府が
西洋の劇場で行われているもののように
日本の歌舞伎も高尚な演劇と
成る必要がある、と
言い張ったからです。
大政奉還の年に
足を切った田之助の居場所は
足のせいばかりではなく
芸風のせいで
居場所を失う。
この人は
時代に大いに迎えられ
また、時代のせいで
追われた人でもあるんですね。
そのあたりの事情が
とーってもよくわかりましたよ。
今でも
時代とうまく添えれば
生きやすくなり、時代と
折り合いがつきにくいと
生きにくい、なんてことは
ありますね。
自分自身は変わらなくても
周囲の状況で、
病のせいで…
こんなにも美しく咲いて
また狂っていくしかなかった
歌舞伎役者がいたのですね。
DJ KAZURU
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