マイクモラスキー編の
「闇市」拝読。
皓星社の紙礫シリーズの
文庫化。
このシリーズ、タイトルが
「人魚」「ダッチワイフ」
「鰻」「耽美」「街娼」などなど
一筋縄でいかないラインナップ。
「闇市」も
太宰治の「貨幣」が最初に収められており
存在感すごいです。
闇マーケットや兵隊の
間で行き来した百円札が
女の人格(!)で
「人間性一般の大問題で
あろうと思いますが
今宵死ぬかも知れぬということになったら
物欲も
色欲も
綺麗に忘れてしまうのでは無いかしら
とも考えられるのに
どうしてなかなか
そのようなものでもないらしく
人間は袋小路に落ち込むと
笑い合わずに
むさぼりくらい合う
ものらしゅうございます
この世にひとりでも
不幸な人間のいるかぎり
自分も幸福にはなれないと
思うことこそ
本当の人間らしい感情でしょうに
自分だけ
或いは自分の家だけの
束の間の安楽を得るために
隣人を罵り
あざむき
押し倒し
まるでもう地獄の亡者がつかみあいの
喧嘩をしているような
滑稽で悲惨な図ばかり見せつけられて
まいりました」
とかいうことを
独白してゆく斬新なスタイルで
戦中戦後を生き抜く人間の
横顔を語る物語。
序文でマイクモラスキー氏は
闇市を描く作品として
質の高いものを選ぶなかで
できるだけ知名度の低い作品を
収めた、とあるように
知らない作品、作家だらけ。
いいですねー、アンソロジーは
こうでなくちゃ。
興味津々で読書です。
DJ KAZURU
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