高見順の復刊本
「いやな感じ」、拝読。
すさまじいスラングだらけで
昭和初期の小説に強いわたくしも
さすがに参りました。
「ヨオランのズボンの下に
ヨオゲソでなく煎餅をつっかけていた」
→ 「洋服のズボンの下に
靴でなく雪駄をつっかけていた」
「ガセビリにしちゃ
ハクいナゴだ」
→「淫売にしちゃ良い女だ」
わ、分からなかった···
他にも娼婦は「ビルマル」
玉ノ井は「ノイ」
接吻は「サシミ」、と
この調子。
売春宿をケチつけながら
回ってるくせに、女郎に惚れやすい
アナーキストくずれの半世記です。
彼が京城、根室、上海と
移り住むあいだに
2.26.事件などもおこるわけですが
世の流れの
中央で暗躍しているわけでもない。
いやな感じ。とは
ラスト、中国人を処刑するのを
買って出た主人公が
刀を振り下ろしたときの
こころの叫びでした。
わたくしは高見順の
「敗戦日記」に感じ入ったクチ
なので、ギャップにびっくり。
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がばっと真っ赤な口があいて
首がーーーころりと
穴のなかに落ちるはずなのに
そのままぶらんとなって
「なんだこりゃ」
皮膚を切り残したらしく
その皮膚で首がつながっている。
首をぶらんと前に垂らしたまま
まだ尓公はもとのままの姿を
崩さなかった。
(いやな感じ!)
俺の内部から不思議な笑いが
こみあげてきた。
気が狂った笑いを
俺は笑い続けながら
穴のなかにころげ落ちた。
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DJ KAZURU
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