殺人事件があり
容疑者がいる。
真実は何か、という
ミステリー要素はあるんだけど
これは謎解きではなく
人間の歳月の物語。
12年もたつと
どんな年代の人でも
家族構成もかわり
身体も病気で状態がかわったり
するものだけど、いつから
どういう道を経て
「現在」の自分になったのか
そういうのはふわふわしたまま
だったりするものです。
登場人物は
全員が模索しますが
決定的な「あの時」を
一生懸命振り返っても
靄がかかってわからない。
終盤、携帯カメラに残された
膨大な写真を確認することで
そうだったのか、と
認識していく場面がありますが
そんなことでもなければ
大切だったはずのことも
記憶の外になってしまう。
作者の高村薫氏は
平成の風景を描いた、とも
語っていますが、SNSで
表向きの自分とは違う面を
堂々と世界発信することが
できる時代の風景、なんですね。
発達障害でネットゲーム依存とか
人の写真を使って悪意あるコラージュとか
共感しにくいことも
多く出てきますが
さすが、高村薫の作品です。
これは吉祥寺よりも
西の、つまりは東京とは
言えないような東京の
話でもあるので、土地勘の
ある人だと更にイメージ豊かに
読めるんでしょう。
DJ KAZURU
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