金原ひとみ 著
「軽薄」拝読。
叔母と甥の不倫関係。
殺意を抱く者と抱かれた者。
自分が産み出した存在なのに
全く子供のことが分からない感覚。
そんなことを軸に物語は動きますが
作者独特の「人との距離感」が
相変わらず面白いです。
姉妹の関係を
「同じ膣を通過して生まれた生き物」
のように認識したり
幼い息子のことを
「じぶんの膣を通過した
男性器を持っている」と
考えたり
なんとも思考が素敵です。
親戚が集まる場や
子供のサッカー教室の付き合いでの
どうしようもない居心地の悪さの
描写も大好き。
ひずみ、を書くのが
本当にうまくて、読後感は
かなりどんよりするのに
がーっと読んでしまいます。
作者が実生活で行っている
子育ても、外国暮らしも
すべてこういう小説を書くために
やっているんじゃないかと
思うくらいですよ。
···
激しい恋愛をしていた
あの頃がユートピアで、今が
ディストピアだなどという考えは幻想だ。
あの頃にはあの頃の地獄があって
今は今の地獄がある
自分の生きていた世界が
美しかったことなど、一度もないのだ。
DJ KAZURU
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