紙礫シリーズ「街娼」
マイク·モラスキー編、拝読。
主に戦後の娼婦たちを
扱った短編集。
芝木好子あたりは
「洲崎パラダイス」で知っており
想像通りの内容。
しかし沖縄が舞台の
吉田スエ子による1984年発表の
「嘉間良心中」などは存在も知らなくて
大変興味深く読みました。
脱走兵が登場したところで
山田詠美の
「ベッドタイムアイズ」を
想起したので、調べてみたら
「ベッドタイム」が出版されたのは
1985年。
ほぼ同時期に
「基地の街」における「脱走兵」との
恋愛が書かれていたことになります。
····
編者によると
「パンパン」を扱った手記で
当時とても売れたものが
あったそうで、そこからも
収録しようかと思ったらしいですが
「被害者本人が赤裸々につづった」と
いう触れ込みながら
よくよく調べてみれば、それは
正体もしれない作者によるもので
浅ましく、センセーショナル狙いの
内容で、とても
文芸作品とは言えないのだとか。
そういった編集作業を経て
ふるいにかけられた
小説が収められただけに
大変読みごたえがあります。
·····
中でも、1958年に発表された
大江健三郎の「人間の羊」は
一般人の日本人が戦後どのような
心持で占領下で生活していたかを
心の問題として衝撃的につきつけてきて
やはり格別の味わいなのでした。
ガツーン、とやられます。
歴史の上に現在があるのなら
今に生きる我々も
こうした作品に触れておくべきでしょう。
DJ KAZURU
Add A Comment