皆川博子著
「虹の悲劇、霧の悲劇」拝読。
昭和50年代が舞台の復刊
シリーズです。
耽美な江戸ものや
幻想的な世界観の小説が多いなか
このような秀逸なミステリーを
書いていたのかと
その幅の大きさに感服です。
本当に皆川博子の頭のなかは
どうなっているのでしょう。
「虹の悲劇」は、朝鮮人の
強制労働というおぞましい史実と
夫の裏切りに心を潰された
女性の恨みが巧妙にクロスした
複雑な殺人事件。
謎の正体は見えず
文体の美しさにひきずられて
最後に到達する感じが心地よかった。
作者としてはそもそも出版社の
意向で書いたミステリーなので
今更復刊しても、また内容も
よく覚えてないし(マジか)···という
感じっだったらしいですが
埋もれてしまった作品を拾い上げて
再度世に出すのが得意な
日下三蔵氏の見事な仕事です。
こんな作品でも本人の記憶から
薄くなってしまうなんて、充実した
作品がおおすぎるのですよね。
書いたそばから過去になってしまい
また次のものに取り組むのが
作家、ということでもあるのでしょうが。
DJ KAZURU
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