
パトリック・ジュースキント著
「香水」拝読。
1985年に発売されて以降
世界的にヒットした作品ですが
なるほど、人間を魅了する香水を
生み出すものが、一方で
猟奇的な行動にでるという二面性に
翻弄されつつ
すいすい読んでしまいました。
1738年フランス生まれの
奇妙な男の話。
体臭がまったくなく
代わりに存在するあらゆるものの
匂いが判別でき
ブレンドされた香水でさえも
何をどのように混ぜてつくられたか
完璧にわかってしまう男の生涯。
当時のフランスは水道が発達して
いないので、相当な悪臭に包まれていた
わけですが、そういう環境の描写と
主人公の超人的な
香りへの憧れと探究心のあれこれが
あいまって、恐ろしくも魅力的な
お伽噺のようでした。
主人公は幼い頃は革職人に売られ
つぎはスランプ調香師に雇われ
恵まれたとは言えない
運命のなかで技術を
身につけ、自分の理想の香りをつかむため
羽ばたこうとしますが
彼と関わったものはなぜか
直後に死亡し、主人公自身も
処女の香りへと到達するために
大量殺人者になってしまう···
魔女狩りの狂乱のような
ラストに至るまで面白く読みました。
池内紀氏の訳の上手さに
乗せられたところもあるようです。
DJ KAZURU
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